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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第76話、良かれと思って、がむしゃらだった余計なお世話




「……【デルカムラ・レイバック】。先程少しばかりその効果のほどを解説しましたが。実は、私が取って置きとして扱う【デルカムラ】とつく魔法は、結構な種類がありましてね。私としてもそれなりに長い冒険、物語の日々を送ってきましたが、実は今回の魔法を使ったことはほどんど……いえ、思い出せる限りでは初めてだったと思います。それでも、ある程度の使い方と効力、使うべき時期が理解できてしまうから、今回のような結果になってしまったわけですが」




早速、とばかりに。

改めて一堂を見渡して、だけど少しもったいぶった感じで語り始めるラルちゃん。



ここまで来ればみなさんお気づきというか、薄々そうだとは思っていたけれど。

魔王っぽい存在を、味方もろとも吹っ飛ばして倒してしまったその後のことについて、できれば語りたくない感じがひしひしと伝わってくる。


それほどまでに、ラルちゃんにとってよろしくないことが起こってしまったのか。

その割にはアイちゃんには、何憂うことがないから安心して欲しいなんて前置きするものだから余計に気になってしまって。

今回ばかりは口を挟むことなく、ラルちゃんの言葉の続きを待っていて。




「……【デルカムラ・レイバック】は、敵味方に限らず、それを受けた対象がその日までにしていた選択、行動をなかったことにできるという魔法……であると思われます。どれくらいの期間、『なかったこと』になるのかは、いかんせんまだ情報が少なく定かではありませんが、世界の……『ブラシュ』の国の危機に対しての対応でしたので、そう長い時間ではないとは思います。闇を信ずる方達の、『ブラシュ』の国にて色々な企み、その選択肢がなかったことになるわけですね。彼らに対しては、残っていたお仲間もいるかもしれませんし、要観察ではあるでしょうが……問題というか失念していたのは、【デルカムラ・レイバック】を放つその直前までいたはずの、囚われ召喚の贄とならんとしていた『ブラシュ』の力ある方達が、その場からいなくなってしまったことなのです」

「……あっ」



勢いに任せて一気に、とばかりに。

覚悟を決めたからなのか、まさに救世主のとっておきな魔法を放ったその瞬間について語ってくれる。


要観察、だなんて言ってはいたけれど。

悪さをしようとする、その選択そのものを排除するとのことなので。

救世主さまの専用魔法ってやばすぎるというか、痒いところに手が届きすぎな便利魔法に開いた口も塞がらなかったわけだけど。



それより何よりも、ラルちゃんが今の今まで引き伸ばしに引き伸ばして渋っていた理由。

囚われていたはずの『ブラシュ』の王族の方々。


あの時あの瞬間、なんて言うかもの凄く嫌な予感がして。

何だかすべてが終わってしまいそうな、恐ろしいものがやってくるような気がして。

自身の魔力許容量も顧みず、その場にいた囚われの方達だけは逃がさなければと、【リィリ・バッシ】の魔法を連発していた俺。



何とか全員その場から離脱させることができて。

しっかり仕事ができたって、満足感すらありつつも消えていった俺。


しかし、よくよく聞きますと。

救世主さまの救世主な一撃は、敵味方関係なしだけど、ダメージがあったりする類のものではないようで。

むしろ、敵味方込みでぶっぱなすことのできる、何とも都合のいいというか、素晴らしい魔法のようで。



そう言うことは事前に言って欲しかった、だなんて。

当然のように言えるはずもなく。



結局、やらかしてしまったのは彼女ではなく、俺一人のようで。

やべっ、とばかりに思わず声を上げてしまったら。


どうやら、あんまりお話したくないのはその後のことだったらしく。

何かあった? どうかした? とばかりにみんなに注目されてしまって。




「……すみません。そんな事とは露知らず、良かれと思ってあの場にいたみなさんを逃がしてしまいました」

「もしかして、受けた対象をランダムで近くへ飛ばす時魔法ですか? さすが、多彩ですわねぇ」

「それって風の姫さまの魔法なの? 時魔法の範疇なんじゃあ」

「すみません、ごめんなさいぃ。知らぬこととはいえ調子に乗ってました。調子に乗りすぎて気持ちよくなっちゃって、その後のことも考えずに消えちゃったとこまでがセットです」



けっして責められているわけではなかったのだけど。

いつぞやの時のように、仕出かしてしまったことに対して慈悲を請うことしかできない俺。

いっそのこと、土下座でもしましょうか、なんて救世主さまのことを伺うと。


何だかんだというか、今まででさんざんばら分かっていたことだけれど。

やさしいやさしい救世主さまは。

そんな卑屈まっしぐらな勢いでしゃがみこもうとする俺を止める勢いで、狼狽えあたふたしつつすぐ傍までやってきていて。



「ちょっ、いきなりなんなのさ、ですかっ。ローサは悪くないですって。前もって何も言わずに行動に移してしまったオレが悪いんだから……」



やはり、動揺するというか予想外のことが起こると素が出てしまうらしい。



でもそれでもやっぱり彼女はどこまでも慈悲深いと。


結局のところ平伏する勢いの俺が、そこにいて……。


SIDEOUT



      (第77話につづく)










次回は、6月1日更新予定です。

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