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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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72/116

第72話、気づいたら、救われていた。故にこその運命の人



SIDE:ラル



イゼリの突然の自分語りが功を奏したのか。

先行して色々と準備してくれていた、エクゼリオ一家(エイミ、レミラ、ノアレ)の別邸に辿り着く頃には。

お互い何だかんだいって先送りにしていた『ブラシュ』についての話題へと入れる準備もできていて。



ラルたちは。

実地体験学習までまだいくらか時間があるのをいいことに。

家族団らんを含んだ、またしても腕によりをかけるという夕食の準備の間、ラルに宛てがわれた客間……案の定VIPちゅうのVIPが泊まるための部屋に集まっていた。


豪奢な天蓋付きのベッドなどもあったりして、宣言していた通り、そう言った暮らしに慣れていている姫様な方たちと違って、うおぉでっけぇ、すげぇだなんて驚いて見せたのはローサばかりで。



5人が集まってのお話し合いのスペースは十分にあったのだが。

そんなわけであっちへうろうろ、こっちへうろうろ、どこへ座ったらいいのかまごついているローサが何だかおかしくて。

だったらオレの隣へ……ベッドが空いてるから座ればいいじゃないって、ぽむぽむと白く、虹色に輝く掛け布団を叩いてみせたことで。

余計にローサがテンパってあたふたして、逃げ出したくなるのを何とか堪えているのを、みんなにに笑われたりして。


うまいこと、更に雰囲気が柔らかくなったところで。

それこそ、王様……グレアムがふんぞり返って座っているのが似合いそうな大きにすぎる真紅のソファに沈み込んだアイが口を開く。




「ええと、んと。わたしは……『ブラシュ』の水の王都のいちばんさいごの妹として生まれました。ほんとうは、都がずっとずっと栄えていけるようにって、【ウルガヴ】のかみさまに仕える役目を負うはずだったのですけど……いちばんうえのお姉さまが、まだ幼いわたしじゃぁじゅうぶんお役目をはたせないからって、お外へ修行にって、連れ出してくれたのです」



世界を、魔力を構成し支えるという12の根源魔精霊。

魔精霊の括りで言えば、【神型】の長でもあり、アイが言うように今現在地上に顕現しているはずの6人は、その属性に愛されしものが多く住む地にて、実際の神として崇められている。


水の都である『ブラシュ』には、その名が示す通り水の根源魔精霊【ウルガヴ】がいて。

その神に繁栄を願って仕えるという役目とはこれすなわち、アイは王女でありながら、【ウルガヴ】の巫女でもあるのだろう。



ラルがかつて、【カムラル】に愛されし魔法使いとして生きて。

ついには、世界を護り支えるための礎、救世主となったように。

つまるところアイは、国を支えるために生きる事を運命づけられていたのだ。



「そうしたら、黒色のもやのような……【エクゼリオ】の魔力もったモンスターさんたちに襲われて。だけどわたしだけが、たぶんローサさんやリーヴァのお姉さんが使う【リヴァ】のまほうだと思うのですけど、『ラスヴィン』の町の近くに飛ばされて……さんぞくのおじさんたちにつかまっちゃったけど。今思えばそのおかげでめがみさまに、【カムラル】のかみさまにあえたのだから……よかったと思います」



そう言って、最後にはそれまでの怖かった事、大変だった事なんてなんでもないことだったって。

ラルに会えた事への、喜びで締めるアイ。


きっと彼女は、自分が幼くて力が足りないから町を出されたわけではなくて。

唯一無二の『水の巫女』として、闇の眷属に支配されんとしていた町から離れ脱出するために多くの人の手助けがあって、今ここにいる事にも気づいている。


今の今まで自身の今までを口にする事がなかったのは。

自分だけが国の危機から逃げ出す形になってしまった後ろめたさと。

自身を庇う形で国に残されている大切な人達がどうなってしまったのか、怖くて仕方なかった事と。

そんな危険かもしれない故郷に、運命の出会いとも言える『めがみさま』とそのお友達を関わらせたくなかったから、なのだろう。



でも今は、彼女がそうやって躊躇い戸惑っているうちに。

『めがみさま』だと思っていた救世主の彼女が、すべてをいい方向に、解決してしまったようであるから。

アイは笑って、故郷へ帰る決意を持つことができたのだ。




「……成る程。あれですかね。数ある【リヴァ】属性の移動魔法の中でも至高とされる希少魔法。それを受けたものを助けてくれる、運命の人のもとへと送り届ける魔法だったのでしょう」

「そんなすごい魔法があるんだねぇ。でもそれも、アイちゃんが大切で愛されてるってことだよね」

「知らなかった。そんな魔法もあるんだ。【リィリ】の魔法は奥深いなぁ」

「ちょ、めがみさまって、運命の人って。そんな大げさな。っていうか、お、私はしがないいち【カムラル】の侍従、魔精霊であって根源とかじゃないからっ」



やはり、集まるべくして皆はラルのもとへと集まってきたのか。

皆がそんな風にしみじみ納得している中。



当の本人であるラルだけが。

言われてみればどこに行っても、【カムラル】の神様なのですねと、いつもいつも勘違いされるんだって。


やっぱり、自身への理解が薄いというか皆無に等しいラルのそんなぼやきが。

誰に届くこともなく、虚しく辺りに響くのであった……。



SIDEOUT



     (第73話につづく)








次回は、5月20日更新予定です。

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