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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第63話、親友同士なら、幌の上で風に吹かれても



SIDE:ローサ(inサーロ)




初めは、学園都市までの道行きで、日が暮れて眠りについて朝を迎えたら元の俺に戻っているだろうって。

軽い気持ちで、そう滅多に体験できるものじゃないであろう、我が種族特性でもある『魂の入れ替わり』を、こうなったら全力で楽しもう、なんて気でいたのに。



一日目は、森深い場所だけど元々旅人の宿泊地と化していたらしい、木々の燃えかすが残る場所で野宿して夜を明かした……どうも、ローサの中の人がどうしようもない俺である事すら忘れ去られてしまっているのか、いたたまれない深夜のガールズトークに巻き込まれて。


みんなして結構無防備というかなんというか、無害な人と思われているというか、複雑な気分もあってそれどころじゃなかったけれど。



二日目は、途中にある小さな町に。

三日目は国が変わるらしく関所のような場所で夜を過ごし、これといって話題になるようなハプニングもなく日々が過ぎていって。



学園都市『ヴァレンティア』に属する土地へと足を踏み入れる事となった四日目になっても、俺は元の姿に一向に戻る気配はなく。

それでも、高等な移動魔法を使えるだけの魔力は回復したから。

俺とリルさんあたりだけでも、一足先に『ブラシュ』へ様子を見に行こうかと進言しても。

実はもう俺と違ってすぐに復活したらしいリルさんが夜通し休みなく馬車馬のごとく先行していたらしく。



「ローサさんが無理する事はありません、既にリルに確認に向かわせていますが、目論見通り特に問題はなさそうですので、私たちはゆっくり向かいましょう」



などと、真摯に気遣う様子でラルちゃんにそう言われてしまって。

なんとはなしに、何かを誤魔化していて今すぐ向かう事が憚られる感じが滲み出ていたから。

そ、そうですか。なんて言ってとりあえずは納得するしかなかったわけだけど。



そこに来てようやくと言うか、遅すぎる気もしなくはないけれど。

不意に思い出したのは、我が一族に代々受け継がれている特性……『魂に入れ変わり』についてであった。



始めは、表に出ている人格が命の危機に陥った時に入れ変わりのだと聞かされていたけど。

どうやら、そのタイミングはそれだけじゃないらしく。

かつての故郷オリジナルの俺がそうであったように、大切な人に強く求められれば変わることもある、ということで。



俺が未だ元のサーロさんに戻れないのは。

たぶんきっと間違いなく、ラルちゃんにローサであることを求められているからという結論に至ったわけだ。


昔ラルちゃんが、救世主の使命に嫌気がさして、女性ににしかできないそれを変わってあげようと『変わった』時のように。

ラルちゃんがローサのままでいて欲しいというならば、出来うる限り今のままでいる次第である。


嘘つきでストーカー気質な野郎の俺に戻ってしまうのはできればやめてほしいだなんて。

ネガティブな事は極力考えないようにして。



相も変わらず女の子だらけで中々に居場所がないというか、肩身の狭い馬車の中から、一声かけて外へと飛び出す。

そしてそのまま、【ヴァーレスト】の魔力そのもの意志なき透明の魔精霊たちの力を借りて。

なんちゃらは高いところに上りたがるの精神で幌の上に降り立って、辺りを見回した。




「……おぉ、いかにもなお城が見えるじゃないですか。確かあれも学園の校舎の一部だったっけか」


まだ、到着するのには結構な時間がかかるというのに、尖塔……あるいは時計台のようなものが見えるのは、それだけ規模が大きいからなのだろう。

過去にも一度、『ヴァレンティア』に来た事はあったけど、ルートが違えば見映えも全く違うんだなって、しみじみしていると。

そんな呟きが御者席にまで届いたのか、意志の希薄な、外ならそこらにどこでも舞っているか弱き【ヴァーレスト】の魔精霊の騒ぎに気づいたからなのか。


やんごとなき立ち位置にはまったくもって似合わない、だけどその仮面マントな姿には似合ってなくもない仕草で。

片手をかけて、勢いをつけて実にスマートにこちらへ向かってくるラルちゃんがいて。




「ローサさん、どうかしたんですか? こんなところに一人で。危ないですよ」

「いやいや、それはこっちのセリフだって。まぁ、俺の場合しくって落っこちても今の状況なら風が親切にも助けてくれるので問題ないんだけども」

「あ、そうなんんですか。隣、座っても?」

「……いや、ラルさまがいいならいいんだけどね」

「それじゃ、失礼して」



後々に知り得た事ではあるけれど。

どうやらラルちゃんは、故郷でローサのオリジナル? にも会ったことがあるというか、随分と親しくしてもらっていたようで。

文字通り、『親友』と言ってもいい間柄であったようで。

ちょっと過保護な気もしなくもない気遣いも含めて、そりゃあサーロより近くにいるなら彼女の方がいいよなぁってしみじみ納得してしまって。



そうして俺たちは。

学園都市ヴァレンティアへ辿り着くまで。


何語る事なく柔らかな風を受けつつ、何だかとっても心地よい瞬間ときを過ごすのだった……。


SIDEOUT



    (第64話につづく)









次回は、4月21日更新予定です。

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