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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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43/116

第43話、女神でも魔王でも救世主でもないのならば



SIDE:サーロ


 

どうやら俺だけでなく、ご多分に漏れずラルちゃんの仮面で隠しても隠しきれない魅力のようなものにやられてしまって。

ノアレさんもラルちゃんの羽休めな遊楽行脚という名の冒険(実際は、アイちゃんを故郷に送り届けるといった理由はあるのだけど)についてくるらしい。


そんなわけで、ノアレさんにとってパパさんにも等しいグレアムさんに、一応お別れの挨拶をしに来たつもりではあったのだろう。


しかし当の彼女は。

きっと間違いなくまずは反対するだろうグレアムさんの意見などどうでもいいとばかりに。

同じくいつの間にやらラルちゃんについてくることとなったリーヴァさん(どうも、ギルドの受付嬢は元々本業ではなかったらしく、専属にたりうる相手を探していたというか、一緒に冒険する人材を探していた、とのこと)や、タナカさんを引き連れて台所へ行ってしまったから……

ある意味高貴なるヴァンパイアらしくない、きっと初めて見るようなグレアムさんのひれ伏す姿を目の当たりにすることはなかったわけだけど。

 

……っていうかグレアムさん、ついさっきラルちゃんと顔を合わせてたような気がするんだけども。

どうして今ここに来て、このタイミングでそんなリアクションをしているんだろう。

正しく土下座スタイルで頭を下げたまま、それから沙汰を待っているさっきの俺のように何も言わない様は。

普段中々お目通りもできないような、天上の存在を目の当たりにして、『顔を上げよ』的な言葉が頂けるまで待っているようにも見えて。


何度も言うけれど、故郷でも間違いなくやんごとなき地位にいたはずなのに。

そんな、グレアムさんの突然の行動に理解が及ばない様子で戸惑っているというか、少し引いている気もしなくもないラルちゃん。

逆に、元々は自身のドジっぷり? が原因であるのに、改めてこの場に……グレアムさんに会いにいく事をいやがっていた風のイゼリちゃんは。

そんなグレアムさんの姿を見て、何故だか目をきらっきらさせてその惜しげもなく晒されたおみ足を上げようとしたので。

慌ててアイちゃんと一緒になって、ある意味そんなイゼリちゃんの破天荒な行動を止めることに成功する。


そんな俺たちを見て、ラルちゃんは驚きとどまっている場合じゃないと気づいたらしい。

はっとなって、声をかけるどころか抱き起こす勢いで近づいていく。


 

「ちょっ、ちょっと顔を上げてくださいって。誰かと勘違いしてませんかっ。なんで急にそんな。先程お会いしましたよね?」

「おおぉ、これはこれは恐れ多いっ。この魔力の波動は間違いありませぬっ、魔王さまっ、こんなわたくしめにお手を貸していただけるなどぉっ」


するとグレアムさんは、何だか聞き捨てならないフレーズを口にしたかと思うと。

らしくない飛び上がりようで、恐縮しきりな様子でばばっと距離を取るグレアムさん。

 


「魔王……さま?」

「言うにことかいて魔王って何さぁ! それを言うなら女神さまでしょ」


どこか、いつもと様子に違う感じで茫洋としつつ反芻するアイちゃんが気になったのに。

被せるように最もなことをイゼリちゃんが言うから、案の定ラルちゃんが勢い込んで反論することとなって。


「いやいやっ、魔王でも女神でもないって! ないですって! オレ、私はえっと、なんなんでしょう……?」


だけどどうやら、やんごとなき血筋の、救世主に連なる美少女です、とは自分からまさか言えないようで。

何だか哲学っぽい自問自答していると、グレアムさんは自身が問われたと思ったらしい。

実に語れることが誇らしいとでも言わんばかりに、勢い込んでそれに答えだす。


 


「……あれは、忘れもしませぬ。我が未だ血に飢え血気盛んであった若き頃、魔の者共が一同に介する集まりで遠目ではありますがお目にかかったことがあるのです。紅蓮の炎のごとき赤と、全てを染めゆく漆黒、生まれながらの王を誇示する金糸の難き魔力、その髪色……ずっと目に焼き付いておりますっ」


それが、ラルちゃんであるということは、この世界にやってきたばかりの彼女であるからしてまずありえないというか、やはり他人の空似なんだろうけれど。

それでも確かにグレアムさんの言うとおり、金、黒、赤のその身に秘めし魔力の素養を表すとも言われる三色の髪色は中々に珍しいというか、グレアムさんが『魔王』さんであると勘違いするのも仕方がないのかもしれない。


……後々聞いたところによると。

最初に会った時は、今のようにきらきらに輝くほど生に満ち溢れ、魔力が滲み出ていなかったから、すぐには気づけなかったらしい。

それが逆に言えば、ついさっきまではラルちゃん自身あまり元気がなくって。

今は元気いっぱいであるそのきっかけも気になっちゃうわけだけど。



それより何より、そんなある意味対極めいた二つ名と言うか呼称で呼ばれるのもあれだろう。

それはグレアムさんの勘違いで人違いで珍しいけど他人の空似ですよと、満を辞して俺が説明しましょうとばかりにずずいと前に出たのに。



「……あ、なるほど。そういう事ですか。確かにこの髪色は私たちの一族に出る特徴ですからね。こちらにも親戚……魔人族を統べるひとがいてもおかしくないかも」



ひどくあっさりと、グレアムさんの思い出話をラルちゃんが肯定するものでから。

いくらなんでも設定盛り込みすぎじゃなかろうかと、開いた口が塞がらない俺がいて……。


SIDEOUT




     (第44話につづく)









次回は、2月17日更新予定です。

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