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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第35話、こうして無自覚なままに、あったはずのフラグを持っていかれる


SIDE:ラル



「……あっ、おにいちゃん」

「……っ!」


ラルの、ちょうど首下から聞こえる、アイの呟き。

確かにそこには、サーロの姿があった。

どこか、笑っているようにも見えなくもない、サーロの寝顔。

ほとんど無意識のままに、その魔力……魂の色を見ようとするも、どうしてかうまくいかない。


『おぷしょん』化により、力が六分の一に落ちていることを自覚していないラルには。

その微動だにしない身体から【ヴァーレスト】の魔力が、色が抜け出て少し離れたところに浮いているようにも見えて。



「……」


こちらに未だ気づいた様子もなく、そんな抜け殻のようであったサーロに向かって。

お辞儀でもするみたいに顔を近づけていく、薄着でピンクゴールドの髪が映える少女。


……瞬間、カッとなった。

故郷での思い出、記憶がフラッシュバックしてくる。



ラルは過去に一度、そのサーロと同じ魂の色持つものを、失ったことがあった。

浮かんでくるのは、その時その瞬間の、死に際の微笑み。


それが、眠るサーロとダブって見えた時。

思わずラルは叫んでいた。



「やっ……やめろおおおぉぉーっ!!」

「わわっ」


仮面で隠していた本当の自分のことすら忘れ去って。

素の自分が顔を出す。

その、急であからさまな代わりように、アイはびくりとしていたが。

それでもラルたちに背を向けたままの少女は、その動きを止めようとはしない。


やはり、グレアムの言葉通りに。

そこにいる彼女はヴァンパイアの取って置きで、自らを保つためにサーロの血を吸って眷属化するつもりなのだろうか。


……そんなこと、させるものかと。

叫ぶとともに、ラルは【カムラル】の蜃気楼纏いし風になる。

それはまさに、目にも止まらぬ動きであったが。


それからの一連の出来事は。

一部始終を後ろから目の当たりにしていたアイにとってみれば、時が遅くなってしまっているように見えたことだろう。


少女の顔とサーロの顔が触れよとばかりに近づきかけるその直前。

なんとラルは、その間にギリギリのタイミングで割り込むことに成功して。



「……っ!? 運命の……ヒトッ」

「え?」


よほど集中していたのか。

そこで初めて、ラルに気づいた様子のピンクゴールドの髪の少女。

急に割って入ったラルに驚きはしたものの、その刹那の間にじぃ、とラルを見つめたかと思うと。

仮面の奥に僅かに見える、黒の瞳の内に潜む紅髄玉カーネリアンを見つけ出したようで。


その瞬間、その炎色に焼かれたように、熱に浮かされて。

高揚、恍惚とした少女の呟きが漏れてくる。


そのあまりにあまりな変わりようを。

何だかつい最近垣間見たばかりのような気がしなくもないラルであったが。

その様子を見ていると、サーロを狙っていたわけではなかったようで。


つまりは一体どういうことなのかと。

素のままラルが首をかしげていると。



「キレイな赤……いただきマス」

「え、あ、ちょぅっ!?」


真っ白なフェイスマスク越しであったからこそ、少女のあまりにも突然で大胆な行動……くちづけに、反応が遅れてしまうラル。

何が何だか分からないままに。

ラルはただただ、それを受け入れてしまっていて……。


SIDEOUT




            ※      ※      ※





SIDE:サーロ


寝たふり狸寝入りをして、添え膳が運ばれてくるのを今か今かと待ちわびていたら。

思っていた展開とは予想が違っていたけれど。

極上の美少女二人(そのうち一人が仮面をつけてはいるが、その匂い立つような美しさはどうにも隠せないのだっ)が、熱い口づけ(未遂)を、寝ている俺のすぐ目の前で繰り広げていた件。


何でこんな展開になってるのかさっぱり分からねーが、これはこれで眼福甚だしいというか、ごちそうさまといった感じなので。

そのまま寝たふりを続けていた俺だったけれど。



「な、ななっ、何すんだよ、いきなりっ!」


初めてであったかどうかは聞きたいような聴きたくないようなだけれど。

赤、黒、茶の神秘的な髪を振り乱して、涙目(想像)というか涙声になりつつ、ばばっと飛び退ったのは。

すっかりキャラを忘れてしまっているらしい、ラルちゃんの方だった。



最初に会った時以来の顔合わせというか、ずっと避けられ続けていたわけだけど。

どう見たってそれどころじゃないらしく、怯えた小動物のごとく更にじりじりと後退しているのが見えて。



「……ナニ、といいますと。契約ですよ。魔導人形として世界に定着するタメに必要なのです。

ああ、申し遅れました、ワタシの初めてのご主人様マスター。ワタシ、『ノアレ』と申します。以後よしなに」

「ま、魔導人形っ!? ヴァンパイアじゃなかったのか。ああ、魔力……魂を定着させせるための契約かぁ。いやでも、それって、あ、あんなことしなくたってできるだろ?」


ノアレと名乗った魔導人形の少女は、必要に迫られたコトなので仕方ないです、といった態度を崩さぬままに、何だかたいへん嬉しそうだった。

対するラルちゃんは、やはり気が動転しているのか、素のままで顔……見えるその白すぎた首筋を真っ赤にさせていた。


なんていうか、ごくごく近いこともあって。

どうにかなってしまうそうなくらい可愛いね、なんて感想しか出てこなくて……。



      (第36話につづく)








次回は、1月22日更新よていです。

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