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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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33/116

第33話、何気ない凄さに、気づけないのは自分ばかり



SIDE:サーロ


幽体離脱……魔精霊化から身体へ戻りかた。

そんなものはとんと分からないって言ったな、あれはウソだ。

……とばかりに。


あっさり我が魂は肉体へと還って。

ガラスっぽい窓越しに魔導人形の彼女を薄目で確認しつつ。

俺は寝たふりを続けながら、死角からこっそり手を伸ばして棺桶のごとき寝台の蓋を開け放って。



「……」

「……っ」


じっと、こちらを注視する気配。

もしかして起きている……こちらが蓋を開けたことに気づいたのだろうか。

こちらの意識があるならば恥ずかしいと、躊躇しているのかもしれない。


それはいかんと。

俺は必死に息を殺し、気配をよりいっそう鎮めていって……。



SIDEOUT




            ※      ※      ※





SIDE:ラル



一端の冒険者であるイゼリや、リーヴァはもちろん、その身には大きすぎる樫の杖を持った幼いアイですらも、大男たちをものともしない実力を持っているようで。

ならば何故、初対面の時はあんな風に捕らえられ押しこめられていたのかと疑問に思うくらいには、ラルの出番などありはしなかった。



(あるいは、ホムンクルスの男たちが、戦う意思、命令までは受けていなかった可能性はあるが……)


そのままの勢いで。

この屋敷の中で一番広いらしい、いかにもな作りの謁見の間までやってくると。


その、派手で大仰で金ピカな王様椅子の前には、メイド長のタナカと呼ばれる女性と。

先程も少し目にした、この屋敷の主にして、この村……町の代表でもあるグレアムの姿もあった。




「……グレアムっ! サーロにぃはどこっ!?」


自身の代わりにサーロが、という部分がイゼリの気を逸らせたのだろう。

唐突で不遜な物言いに、失礼なと怒るよりも早く、そんな場合ではないのだと何だか焦り、驚きとどまっている様子のグレアムが一瞬垣間見えたが。


そこは、高位で高貴な存在、ヴァンパイアであることの矜持があったらしく。

気を取り直し、イゼリの勢いに乗っていくようにして、マントをはためかせ胸を反らしそれに答えてみせた。



「ほう。まさかここまでやって来るとはな! 殊勝なことだか、もはや手遅れよ! 我が同士のサーロには、我が最高傑作の礎となってもらう!」



それすなわち、まだサーロ本人には話していないどころか、グレアム本人も親心もあってまだ納得いっているわけではないのだが。


グレアムのなすべきこと……人の健康増進にも理解があり、魔導人形のマスターとなるべき素養……潜在魔力や才能、人となりも十分と判断したことによる台詞であったが。


悪ノリというか、どうもイゼリたちはグレアムを典型的な悪役に仕立て上げようとしている節があったため、それに広い心で応えた形になるのだろう。


グレアムの冗談半分なその言葉の真の意味は、当然相手にはまったくもって伝わってはいなかった。

むしろ、村の住人からも、裏で何をやっているか分からない、何か悪事を働いているのではないかと思われていることに気づいていなかったグレアムにこそ、結局はおおいに問題があったと言えた。


これで傍に、『健康診断』の発案者でもあり、魔導人形のモデルとなった妻や娘がいたのなら、その勘違いされがちな偽悪的行動、悪い癖を指摘してくれたのだろうが。


あいにく二人は娘の魔法学園入学の手続きのために留守にしていて。

基本グレアムにイエスマンであるホムンクルスや、魔導人形たちしか周りにいないこともあり、勘違いが助長される結果となったわけで。




「……あの人は、どうやらこのフロアの地下にいるようですね」

「そのようですわね。ではわたくしとイゼリさんはグレアム代表のお相手をいたしますわ。お二人はサーロさんの元へ」

「う、うんっ」

「まぁ、仕方がありませんか」

「一度目は武器をを持ってくるの忘れただけだしっ、逃げたわけじゃないんだからぁっ」



リーヴァは、ギルド職員として依頼者に話を聞かなければ、とばかりに得物の鞭をしならせて。

一度逃げ出したと思われるのが我慢ならなかったのか、そんな風に自らドジっぷりを披露していくスタンスの自覚ないままにイゼリが短刀を構え直すと。

そんな彼女たちに対して、何だかとても戸惑っている風のグレアムと、こんな状況でも無機質にメガネを上げ直し、迎え撃たんとするメイド長の姿がそこにあって。




「でもラルさま、ここから下へむかう階段とか、なさそうだよ?」

「いえ、ありますよ。こういった場所の隠し階段がある場所は、得てして決まりきっているものなのです」


内心では、あんまり会いたくないんだけれど、リーヴァさんにうまくしてやられたと思いつつも。

それでも何だか得意げにラルはそう言うと。

アイを引き連れて、始まった二体二のやり取りを脇目に、玉座の裏に回って。




「……あっ、ほんとだ。こんなところに切れ目がっ。ラルさま、すごいっ」

「いや、それほどでもないですよ。お約束の定石ですから」


案の定、なんのひねりもなく見つかる地下への階段。

素直にまっすぐに持ち上げ褒めてくれるアイに、ラルは何だかいたたまれずこそばゆいものを覚えながら。


発見した隠し階段を塞ぐ、地面に見せかけた石蓋を純粋な魔力だけであっさり持ち上げてみせると。

そのままアイをエスコートするようにして、その先へと進み行くのだった……。



      (第34話につづく)








次回は、1月16日更新予定です。

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