表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/116

第31話、弁解の余地もないのに、しっかりと出しゃばって




SIDE:サーロ



本来ならば、この異世界的健康診断を受ける人が別にいた、とのことで。

お金を払うどころか、もらえるのにドタキャン(この辺りは、『健康診断』というものがまだ、この世界に浸透していないが故なのだろう)した人がいるらしく。

ちょうどいいタイミングで空きがあって、俺がそこに入る形になったわけだけど。


正直に言うと、『健康診断』と言う意味では、体験……と言うか、記憶にあったのは確かだった。

前にもちらっと話したかもしれないけれど。

俺は……救世主の二つ名を冠するラルちゃんが暮らす世界にいる俺自身……オリジナルから剥離した分身のひとりなのだ。


つまるところ、ラルちゃんがどの異世界に迷い込んでもいいようにと、無数の世界に俺と同じような存在がいたりするわけで。

自分で言うのもなんだが、正に究極も究極めいたとてつもないストーカー軍団なのである。

そりゃあ、ラルちゃんに避けられてもしょうがないというか、いやだって言っているのに結局他の人に化けて付きまとっているわけだから、弁解の余地のクソもないわけで。


……ああ、話が逸れたな。

いや、その事を考え出すとやるせないから逸らさせてもらおう。


とにかく、その分身同士は夢を見るという形をもって、ある程度の情報交換ができるわけなのだが。

その中には、所謂『健康診断』なるものがしっかり定着し、存在する世界もあるわけで。


だけど、今回目の前に広がらんとするものは、ヴァンパイア式……いや、異世界風の『健康診断』であって。結構真新しい感じだから、他の自分、分身たちへのいい話のタネになると思ったんだ。

……まぁ、今回の『健康診断』とやらは、グレアムさんの奥さんのアイディアだって聞いていたから。

グレアムさんの奥さんが転生者であるからこそ、俺のように『健康診断』そのものを知っている可能性もあったけれど。


それ以前に。

分け身のみんなが渇望していた、救世主のラルちゃんがこの世界に……俺のもとに降臨したことで。

それどころじゃないというか、爆発してからそこを代われ! などと言われそうなので。

実のところあんまり情報交換したくなかったりもするわけだけど。

それはそれで、やっぱり異世界の新しい挑戦とも言えるそれに興味があったので、がっつり参加させてもらった次第である。



ある意味、一番ヴァンパイアらしい、血液採取からの検査を皮切りに、小さな魔法器具を使っての五感の良し悪しがわかる検査に。

ハコモノを使っての、身体の中を覗くことのできる検査など、実に様々目移りするほどにバラエティに富んでいたわけだけど。


その中でも一番、この世界らしいというか、ファンタジーっぽいと思ったのは。

所謂棺桶のようなものの中に入れられて、それがいくつもの関門のある、ベルトコンベアらしきものに運ばれていくものだった。


どこかで見たことのあるような、トンネルめいた関門は全部で六つ。

それぞれが、過去、現在、未来を指していて、これからかかりそうな病気や怪我、過去の古傷、疾病などが手に取るように分かる、とのことで。


正直なところ数年ほどしかこの世界に来てから経っていないある意味イレギュラーな俺が。

果たしてどんな評価がなされるのか。

単純に、見た目とは関係なく、2~3歳と判断されるのか。

そんな風に考えわくわくしながらも、軽い気持ちで。

その最後の一際大きなハコモノに挑戦したわけだけど。



(……な、長ぇぇっ)


やはり、過去が見つからなくておかしなことになってしまったのか。

認識できずエラーが出てしまったのか。

何度もぐるぐる回らされる羽目になってしまって。


だけどこうやって寝ながらにして運ばれていると、心地よい揺れと振動による酩酊感に、何だかふわふわ気持ちよくなってきて。

いつしか俺は、しっかり眠りこけ、夢の世界へ誘われていって……。




結局のところ。

現在満三歳で、過去も未来もとりたてて問題視されるような、病気や怪我(こちらは治癒魔法などで治してもらってせいもあるだろうが)も見当たらず。

検査が終わっても、起こしてくれる人がその時タイミングが悪かったらしくいなかったこともあって。

そのままどっぷり夢の世界へと突入してしまったらしい。



気づけば俺は、この世界で言うところの魔精霊化……幽体離脱をする形となって。

ベルトコンベアの上、棺桶のようなものの中で心地よく惰眠を貪っている俺自身を見下ろしていた。


おお、これは久しぶりにとても楽しそうな夢だな、と。

さっそく、とばかりにそんな自分を見つめていてもしょうがないので、ふわり飛び上がって外にでも出ようとしたわけだけど。


果たして今の自分は他の人に見えるのかな、なんて考える。

きっと、魔力感知に長けたラルちゃんなら見えるんじゃないかな、などと思っていると。

グレアムさん用の王様椅子などった場所へ戻れる上階段から、誰かがやってきたらしい。

コツコツと軽く響く足音に、メイド長のタナカさんかな、などと思っていると。



今いるフロアと上のフロアを繋ぐ踊り場に、これみよがしに飾られていたというか、祀られていた。

グレアムさん自慢の奥さんをモデルにしたという魔導人形な少女の姿がそこにあって……。



    (第32話につづく)









次回は、1月10日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ