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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第22話、ウィンドウショッピングという名の勝手に鑑定放題、とはいかず




「おぉ~。綺麗だね。ラルさまー」

「へぇ。これはまた凄い量ですね」


どうやら、この魔法道具店マジックショップは、見た目より広い敷地をとっているらしく。

案内されたのは先ほどの売り場と引けを取らない広さの倉庫であった。


入口から部屋を囲うようにガラス棚が並べられていて。

色とりどりの様々な形をした魔法薬らしきものの入った瓶が、色ごとに整然と並んでいる。

目の前にその光景に、二人して感嘆の声を上げるばかりであったが。



「色ごとに効果は違うよ。入用のものがあれば言っとくれ。見合うものも売ろうじゃないか」


まるでないものなどないと言いたげな店主の言葉。

色だけで判断しても、30色以上はあるのだから、得意げになるのも肯けよう。

ラルは、少しだけ考える仕草をしてみせた後、予てより見繕っていた言葉を口にする。



「HP……ライフ、生命力かな。最大値、限界値を底上げできるようなものはありますか?」


かつては一線を画した一角の魔法使いであり、今は疲れを知らぬ精神体……魔精霊であるからして。

実際それほど必要なものでもないのだが、かつて冒険を共にした規格外論外な仲間たちと比べると体力持久力のなさは否めなくて。

鍛えても全く向上しないというイメージがラルにはついてしまっていたのだ。

それが、魔法薬マジックポーションの力で解決出来るなら儲けもの、なんて思いつつそう述べると。



「ふむ。それなら橙色系統のものがそうだね。一つ一つ効果が違うから、これと思ったあったら言っておくれ。効果のほどはいかほどか、詳しく説明してあげようじゃないか。……ま、あまり必要なさそうだけどね」

「……っ」



店主としての長年の勘だろうか。

このような店をやっている以上、真贋を見極める【鑑定】のスキル、魔法を覚えているのか。

ラル自身がウィンドウショッピングならぬ、【鑑定】の魔法を使って品定めしていたのがバレていたらしい。


だからこそ、この場に店主は連れてきたのだろうが。

無意識に金目のものに対して【鑑定】してしまう自分に後ろめたさを感じつつ、苦笑を仮面で隠しながらも言われた通りオレンジ色した瓶の並ぶ所へとやってくる。



「みかんジュースみたい。やっぱりおいしいのかな」


一方、アイは魔法薬の効果より、どうせ買うなら美味しいやつをご所望らしい。

店主によると、色にあった味がついている、とのことで。


本来なら、魔法薬マジックポーションにおいて、二の次であるはずの味まで考慮されているのかと。

作った人に大いに感心しつつガラスケースを開けてもらい、目に付いた三角フラスコ型のオレンジ色した魔法薬の瓶を一本取り出し、早速開き直って【鑑定】してみる事にする。



―――鑑定結果。


『すごい最大体力値上昇薬』

消費期限、一年

持続時間、半永久

シラヌイ味

上昇量、元値の5パーセント

価格、10万Dtドット




「半永久で……十万だって?」


最大値が上がるのだから途中で効果が切れたら問題なので、理にはかなっているのだが。

魔法薬とはいえ、摂取した水分がどうやっていつまでの体に残っていられるのか、ラルには不思議で仕方が無かった。

ただ、効力が本物であるのならば、決して高い値段とは言えないだろう。


この世界に来て成り行きで受け取る事となった賞金某が100万Dtを超えていたので買えなくはないのだが、魔法薬に限らず魔法の品などの売買経験のあったラルは、同業者……とまではいかずとも、どうしても気になって思わず訊いてしまっていた。



「あの、別に疑うわけでもないのですが、この効果とか持続時間とか、どうやって決めているんですか?」

「……ふむ。【鑑定】で見たんじゃろう? よくよく見ればそこまで分かると思うがね」


質問には答えてもらえなかったが、ラルはそれに素直に頷き、もう一度深く【鑑定】をかけてみる。

すると、さっきと同じ情報がラルの目の前に、薄透明なウィンドウとして開示されたが、感覚でそれが下にスライドできる事に気づいたようだ。

早速それにスライドしてみると、ウィンドウに現れるは新たな情報。



『―――エクゼリオ製作所、グレアム・エクゼリオ作。賞味期限、持続時間、効力他は、人体治験実験により算出されています』


「……っ」


あからさまに、不穏な一文。

それは、規格外且つ無自覚なラルの【鑑定】により、知りたいことを開示した結果である。



「ラルさま、どうかした? 何か分かった?」

「……いや、ええ。やっぱり10万は高いですかねって」

「そうかの? それでも全体で見れば安いほうじゃし、それだけの価値はあると思うがのう」


仮面越しでもラルの顔色が変わったのがわかったのか、心配げな顔を向けてくるアイを大丈夫だと諭し、ラルは手にした瓶をそのままガラスケースへと戻す。

上客だと思ったのに買う気がなさそうなラルを見て、店主は単純に残念そうに言葉を返すだけであった。


この薬がどうやってできたのか興味がないのか、知っていて割り切っているのか、特に店主に不穏な気配は感じられない。

……とはいえもしこれが、ウエンピの街の普通であるとするならば。




「……すみません。ほかの仲間と相談して、もう一度来ます」


ちょっと調べてみる必要があるかもしれない。


「おお、そうかい。在庫はたっぷりあるからあね。気長に待っとるよ。ああそうだ、そのお面はサービスじゃ。贔屓にしとくれよ」

「え、いいんですか? やったー」

「……ありがとうございます」


そんなラルの感情に気づく事もなく。

二人は笑顔で店主に見送られて店を出て……。




    (第23話につづく)









次回は、12月15日更新予定です。

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