第21話、柵から飛び出して、やりたかったことのひとつ
SIDE:ラル
「わぁ、思ったよりいろいろあるんだね~」
薬草の類から始まって、それらを使って調理すると、様々な補正を受けられる魔法の食材。
デバフ、バフ用のマジックアイテムを作るための乾きもの系の素材。
なんの効果があるのか、使ってみなければ分からない小物ばかりを雑多に詰め込んだ、マジックアイテムのワゴン。
極めつけは、やはり店の目玉でもあるのだろう、カクテルのごとくカラフルな瓶に詰められた魔法薬だろうか。
アイはそれらの商品そのものより、単純に数の種類の多さに驚いているようだ。
かくいうラルも、【鑑定】を使ってワゴンの中にある掘り出しものあさりをしたい所であったが。
手持ちにはこの世界のお金はなく、野盗と賞金首捕縛の、ギルドからの賞金に至っては、すべてサーロのものだと思っているので、内心では泣く泣くウィンドウショッピングと言う名の勝手に鑑定し放題に勤しむ事にしていた。
「ラルさま、見てみて。オソロイダヨー」
「っ。ボイスチェンジャーの魔道具ですか? またおもしろいものを見つけましたね」
そんな中、ワゴンに顔を突っ込む勢いでアイが引っ張り出したのは、確かに白っぽい色が似ていなくもない、目元に細工の施されたクラウンの仮面であった。
【風】の魔力を少しばかり使って声を変える事ができるらしい。
よくよく見ると、ワゴンには100Dt均一と書かれている。
100Dtが飲食店での飲み物一杯分だとすると、何気に掘り出し物ではないだろうか。
思い出すのは、初めてラルがこの正体を隠す仮面を付ける事となったエピソード。
後々聞いた所によると、ああいうワゴンセールの中のジャンク品を集めて作った手作りだったようで。
それを今は帰れぬ実家に、まだ大切に保管しているのだと気付かされて。
終わっても過去を捨て去る事は出来ないのだと、複雑な感情が湧きたち、ラルはそれを頭振って誤魔化すようにして続ける。
「買うんですか? あいにく今、持ち合わせがないのですけど」
「う~ん。そだね。わたしもそんなにお金、持ってないからなぁ」
着の身着のまま、お財布も持たず故郷……その郊外を散歩していたら連れ去られた、とのこと。
一応念のためと、このウエンピの街に入るまでに、イゼリから小さながま口を預かっているのだが。
それは無駄遣いしていいものじゃないのは重々承知している。
それでも、ガマ口を開いて中身を確かめんとしているのは、アイがよっぽどそのお揃いを欲しがっているからで。
(物々交換はありかなぁ)
ラルもこの世界に来る時、ほとんど着の身着のままであったが、何かあった時に、なんて考えるマメなところもあって。
ワンピースを繋ぐバックルは、簡易的なアイテムボックスになっており、ラルの思ういざと言う時の金目のものがいくつか詰め込まれていた。
あくまでラル主観なので、それらを一つでも出していたら大騒ぎ必死であったのだが、
それはがま口から溢れ出てきたコインやお札のインパクトにより御蔵入りになった。
「わわわっ」
「おっとと」
どうやら、その青色のがま口もちょっとしたマジックアイテム……アイテムボックスだったらしい。
見た目の倍以上溢れてくるお金を、二人でわたわたしながらなんとかしまい直す事に成功する。
しかし、その行動が目立ったからなのか、お金を持ったボンボン=カモだとでも思われたのか。
店の人らしきおばあさんが、わかりやすく笑顔で近づいて来るではないか。
「ほっほ。お嬢様方、お忍びでお買い物かぇ。お見受けするにお二人共魔法の教養も十分じゃないか。お入用なら、とっておきのものがあるぞい。一瓶飲むだけでMP(魔力)の最大値が上がるすぐれものじゃ」
ラルが顔を隠している事で、どこか勘違いしているらしき店のおばあさん。
後半は小声で、二人だけに聞こえるように囁いたその言葉は、ラルの興味を引き付けるのには十分すぎるものであった。
何故なら、ラルの故郷において販売などもちろんしておらず、ステータスを半永久的に上昇させるマジックポーションなぞ、宝物にも等しいものだったからだ。
個人的にMP(魔力)が論外であるラルにとってみれば、それほど重視されるものでもないが。
それ自体が魔法の媒体にも使えるし、MPアップのポーションがあるなら、HP(生命力)アップのポーションもあるのではないかと思ったからだ。
あくまでも自分判断ではあるが。
ラルは体力、生命力的なものが、どちらかと言えば難がある方だと思っていたので。
是非とも欲しいと考えるのは当然の事、なのかもしれない。
「しかし、そういうのってお高いのでしょう?」
「それがそうでもないんじゃよ。この街の特産じゃからの。もしお入用なら、その仮面はおまけで付けるが、ちょっと見ていくかえ?」
言って、店のおばあさんは、カウンターの奥を指差す。
どうやら、特産品とやらはその奥にあるらしい。
道理で店に入ってまず目に入ってきた色とりどりのガラス瓶が。
条件反射で鑑定した結果、綺麗な色水、ショーケース用などと親切に書かれていたわけで。
「物々交換でいいなら、喜んで」
「ヨロコンデーッ」
最早買う気満々で。
ラルとアイは、お揃いの白い仮面をつけつつ、奥へと案内されるのだった……。
(第22話につづく)
次回は、12月13日更新予定です。




