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14 この星の秘密

 地下の喧騒とは打って変わって、地上は静まり返っていた。恐らく地上で仕事をしている機械も、二人の捕獲のために地下に召集されたのだろう。二人が到着したときは賑やかだった大きな空港も、今は空っぽだ。


「テンネ、今まで本当にありがとう。お前の気持ちも考えずに、自分の得た情報をまくし立てて悪かった。あれでは、お前が気を悪くするのも当然だ」


 ミトはテンネを下ろすため、船の窓を開けた。


「いいよ、もう。まだ信じられないけど、このことを知れてよかった。この星がラボとして利用されているなんて、きっとしばらくはこの星でも受け入れられないとは思うけど。でも、絶対伝えるよ。さっきのトーマの話を聞いて、そう思った人は他にもいると思うし。それに、あの火の中から助けてくれてありがとう。ただ、あのアンドロイドたちが燃え尽きていくのは見ていてちょっと悲しかったな」   


 そういうと、テンネはぴょんと船から飛び降り、地上に立ってミトと向き合った。


「テンネ、お前はさっきから、あの機械のこともアンドロイドと呼んでいるな。俺たちの星では、あの外見や性能ではアンドロイドとは呼ばない。お前の星から得た技術なのに、アンドロイドの概念は違うんだな」


 ミトはなんだかおかしくなって、少し笑った。


「なんで?」

 テンネは不思議そうな顔をしている。


「人型で自立している機械は、みんなアンドロイドでしょう?」


 防護服のガラス越しにミトを見て尋ねる。


「いや、外見も能力も人とほぼ同じ高い性能を持ったものを、俺たちはアンドロイドと呼んでいるんだ」

「変なの、外見も能力も人と同じなんて、そんなの、人じゃないの」


 戸惑って自分を見つめるテンネの眼が、カメラのピントを合わせるように収縮しているように、ミトには見えた。 




 テンネが見えなくなるまで、ミトとトーマは手を振り続けた。


「テンネ、大丈夫かな。ポルおばさんも、ひどい目に合わされないといいけど。ところで、二人は最後に何を話してたの?」


 トーマの声が無線を通してミトに尋ねる。


「…ああ、うん。まあ。」

 ミトは気のない返事をした。


「なんだよ、二人の秘密ってわけ?まったくいい雰囲気だったよね、僕のこと仲間外れにしちゃってさ」


 トーマの声をぼんやり聞きながら、ミトは考える。

 どうして自分たちの星は、この星の情報操作に成功したのか。事実を捻じ曲げ、偽りの情報を歴史として伝えていくことができたのか。

 相手がすべてアンドロイドであれば簡単だ、マザーコンピュータですべて一括して情報を統制してしまえばいい。すべてが繋がっているというのなら、完成されたアンドロイドであっても情報の書き換えなどわけないだろう。問題は、人から人へと伝えられてこなかった、ということだ。

 機械じゃないんだ、人の口を塞いで、尚且つ偽りの情報を浸透させるなんて、可能なんだろうか。


 そこまで考えて、ミトは考えたくない結果にたどり着く。

 可能だ、それが、すべてアンドロイドなら。発展し続けるアンドロイドのラボの星でなら。自分たちの星では想像もつかないような、高性能のアンドロイドを作り出している、あの星でなら。


 テンネの眼の動きを思い出す。戸惑って、何か考えているような、こちらの考えを読もうとしているような。それは周囲を明確にとらえようとピントを合わせるカメラの動きに似すぎていて、ミトは身震いする。


 もしかしたら、

 もしかしたら、

 もしかしたら。



あの星に、自分たちの星の概念で言う「人」は、もういないんじゃないだろうか。

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