4月2日(月) ま4
「次は取材班」
「はい、取材班からです。昨今の不景気により月刊HAKATAの売り上げが落ちていることから、取材費も前年度比で二〇%減となり、これでは取材の精度が落ちると交渉を重ねた末に、前年度比で十%減となりました。厳しいことには変わりないのですが、取材費の削減に取り組みながらも、これまでと同様に積極的な取材に取り組みたいと思います」
これまでの部署と違い、取材班からは問題ないと言う一言は聞かれなかった。しかし、井出のやり手ぶりがよくわかった。これまでの予算会議の資料を見ていて、もともと十%減で充分であった。最初に二〇%とぶち上げることで、すんなりと十%減を認めさせている。さすがである。
「次は編集班」
「はい、編集班です。編集班も売り上げ減を受けて、当初一五%減となっておりましたが、交渉の末に十%減でまとまりました。取材班同様、一層の効率化に取り組んで参りたいと思います」
編集班も取材班と同様、特に問題ないとの一言は聞かれなかった。予算減になる部署としてはできれば予算を減らして欲しくないと言うのが本音だろう…。
「最後に総務主任から人件費や事務費などに関しての説明をお願いします」
「はい、総務主任です。人件費につきましてはこれまでの労使協議により、月給は前年度と同じ水準に据え置き、賞与は前年度より〇・二ヶ月減らし三・二ヶ月分とします。また、事務費については前年度比で十%減とします。皆様のご協力をよろしくお願いします」
紫がそう言うと、参加者から拍手が起こった。紫は前任者の井出が作った資料をただ読んでいるだけである。改めて、ここまでお膳立てしてから退職した井出に感謝した。
「以上で各担当者からの意見表明が終わりました。特に質問や意見もないようですが、最後に何かある方は挙手をお願いします。なければ、引き続き採決に移りますがよろしいですか?」
専務はそう言うと、静かに辺りを見回した。会議室は一層静まり返る。紫は最終確認とは言え、こんなにシャンシャン会議でいいのかと疑問に感じるほどであった。
「ないようですので、採決に移ります。今年度予算案に賛成の方は拍手をお願いします」
専務がそう言った瞬間、これまでの静寂さを破るかのように力強い拍手が会場中に響き渡った。ここにいる七名が競うように大きな音をする拍手をしている。
「ありがとうございます。予算は無事に承認されました。紙に書いてある案の部分に線を引いて下さい。これにより本日から今年度予算として執行されることとなります。最後に社長より一言お願いします」
「まずは専務、司会進行ありがとうございます。それから皆様のご理解とご協力により、今年も無事に予算が承認されました。早速、今日より本社の発展の為に限られた予算ではありますが、有効に活用して頂きますようにお願い申し上げます。最後にもう一度拍手をして、予算承認会議を閉会したいと思います」
ふう、やっと解散した。わずか、二〇分足らずで終わったが、紫には数時間の長さに感じられた。初日からこれでは先が思いやられる…。




