表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第4章 再生
89/150

3月14日(水) ×3×

「紫、今日は本当にありがとう! 少ないけど、これ受け取って…」


「いや、いいよ。すみれ…。私、素人だし…」


「まあまあ、紫のおかげで今日のライブできたようなものよ。これでも私、プロでやっているから大丈夫。受け取ってもらえないとかえって困るから…。それに音響はライブでは重要なポディションなのよ!」


 さすがにそこまで言われると断る事もできずに、紫は小さく「ありがとう」とつぶやいて茶封筒を受け取った。ライブ会場の照明に透かしてみると、福沢諭吉が一人微笑んでいるのが見えた。


「ところで紫、この後、裏方メンバーで軽く打ち上げをやるんだけど、紫も一緒に行かない?」


「桜田さん、これも何かの縁なので、ぜひ一緒に行きましょう!」


 タイムキーパーの鹿本や照明担当の三河も誘ってくれたので、紫は思い切って、打ち上げに顔を出す事にした。このような機会は滅多にないだろうし、何より音楽業界をのぞける貴重な機会である。


 打ち上げには鹿本、三河だけでなく、大道具の湯前も参加した。すみれと紫以外は全て男性である。会社以外のメンバーとこうやって飲むのは多分五年ぶりであろうか…。ここでも武下定秋の悪影響が出ているように思えた。


「へえ、紫、レーシックやったんだ。昔からコンタクトは合わないから、メガネ一筋だったもんね。だから、今日、久々に会った時、あれっと思った…。前から思っていたけど、紫は裸眼の方がかわいいよ」


「ああ、それはありがとう! すみれったら…、さっきも話したじゃない…。リハーサルの合間に…。そして、整形何とか…って曲を即興で作ったじゃないの?」


「あっ、そうだったね。ごめんね…。私、音楽に夢中になると、人の話を全然聞けなくなるから…」


 すみれは無事にライブを終えた安堵感から、早くも酔っぱらっているような感じである。紫も全く気を遣わなくていい飲み会は久々だったので、いつになく心地よかった。やはり、会社の付き合いでは気持ちよく酔えないものである。


「昨日も電話で話したけど、五年間付き合った彼氏に浮気され、十年間勤めた会社に突然の出向を命ぜられて、やけくそになっちゃったよ…。何か今ならできそうな気がすると思って、勢いでやったの。やっぱり、人生、勢いが大事だよね…」


「桜田さん、次はどこへ行かれるんですか?」


「次ですか? 次は福岡に行きます。出向先の小さな出版社で総務主任をやる事になっています。鹿本さんは何をされているんですか?」


「何をって? ライブハウスでタイムキーパーなどの裏方の仕事をするのが私の仕事ですよ」


「ああ、ごめんなさい。専業でされている方なんですね」


「紫、ここにいるメンバーはみんなライブボックスにて、専業で働いているのよ。インフルエンザでぶっ倒れた佐田君も含めて…。この業界で掛け持ちの人間って、案外いないものよ」


 紫はインディーズ音楽業界の豆知識がいろいろと知れて、楽しい夜となったし、何よりいい勉強になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ