3月6日(火) ‡3‡
「紫、ごめん。遅くなって…。今日はしゃれたカフェに寄る約束してたでしょう?」
後ろから、いつになく大きな声で陽美が叫ぶ。あまりの声の大きさに紫だけでなく、近くにいた人々も驚くほどである。何より、そんな約束をした覚えがない紫が一番驚いた。
「陽美、どうしたの?」
「どうしたの?…じゃないでしょう。早く行くよ!」
そう言って、紫の横に並んだ陽美が後ろにいる武下定秋を見ながら目配せする。それで紫はようやく全てを悟った。ふと、後ろを振り向くと武下定秋がいなくなっていた。陽美が来てくれたおかげで、奴はまずいと思ったのか、あきらめて逃げて行ったようである。
「ちょっと、あいつ危ないんじゃないの? 待ち伏せして、尾行するなんて、ストーカーと変わらないし…。ここはガツンと言ってやらないとね…」
「陽美、本当にありがとう! 私、怖かった…。まさか、奴があんなことをするなんて思ってもいなかった。あいつ、どんどん落ちていくね…」
「よし、明日、奴を呼び出して、お灸をすえてやらないとね…。そうと決まれば、まずは作戦会議よ。とりあえず、カフェに行きましょう。約束はしていないけど、いい所を見つけたのは本当なんだから…」
「そうね。ぜひ、行きましょう!」
持つべきものはやはり友達である。もし、陽美が機転を利かせてくれなかったら、多分、武下定昭と面倒な事になっていたことだろう。ここまでこじれたら、二人だけで解決するのは難しい…。
第三者に間に入ってもらわないと、武下定秋がさらに暴走して、問題がさらにこじれるかもしれない。ここは陽美の力をとことん借りて解決させるしかない。こうして、陽美と紫は二人でカフェ・ボニータへ向かうのであった。




