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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第3章 決着
74/150

3月6日(火)  ‡1‡

「私、あまりにもひどいと思って、紫の出張中にさ、水戸を呼び出して話をしたよ。以前からいい評判を全く聞かなかったけど、ここまでひどいとはね…」


 午前中の仕事を終えて、久々に陽美と社員食堂で昼食をとる。福岡から戻ってきて、なかなか陽美と紫の予定が合わず、この日、ようやく二人で一緒に食事する事ができた。三月一日は紫が休み、二日は陽美が半日出張、昨日は陽美が結婚相手と外で昼を食べに出たので、なかなか機会が無かったのである。


「ああ、何か悪いね…。でも、もういいよ…」


「どうしたの? 紫…」


「まあ、何て言うのかな…。もう、ふっ切れた…。水戸あおいのおかげで、武下定秋の浮気野郎と結婚せずにすんだし…。それに私、もうすぐ福岡に行くから…。福岡で新しい生活を始めて、そこで素敵な人を見つけるよ!」


「そっか、それならいいけど…。何かさ、あいつ、振られた相手から、よりを戻すように言われて、そのまま元に戻ったらしいよ。本当に好きな人をもう手放したくないから、結婚するんだって…」


 紫は絶句した。水戸あおいは本当にひどい。それが人間のする事なのか? それじゃ、いくら自業自得とは言え、武下定秋がかわいそうになる。一方で振られても、あきらめきれずにいる気持ちも何となく分かる。あまり、理解したくはないけど…。


「で、その相手から振られた時、楽しそうにしている二人が何となく目障りだったらしい。それで水戸は武下にちょっかいを出すようになったってさ…。水戸も相当ひどいけど、それに乗ってしまった武下も本当にひどいよね…」


「そっか…。ま、もう過ぎた事だし…、どうでもいいよ。マジで…。私、思うんだけど、多分、水戸あおいは幸せになれないよ。相手の浮気癖とかそんなに簡単に直るはずも無いし…。きっと、これからずっと、その男に振り回されると思う」


「紫もそう思うよね。でも、思ったよりも穏やかそうで安心した。一時期はかなり追いつめられていたみたいで、本気で心配したんだよ…」


「まさか、怒り狂って、包丁を振り回すとでも思ったの?」


 紫がそんな冗談を言うとでも思っていなかったのか、陽美は大笑いしていた。紫もそれにつられて笑い出した。実を言えば、武下定秋と別れた直後は水戸あおいを一思いに殺してやろうかと思った事もある。


 妄想の中では数えきれないぐらい包丁を刺したし、細い首を力一杯絞めたし、車で勢い良くぶつかった。それでも武下定秋が戻ってこないなら、奴も殺して自分も死のうかな…と一瞬だけ頭をよぎった事もある。今となっては、そんな馬鹿な事しなくて本当によかったと感じる。


「ちょっと…、結婚前に友達が怒り狂って人を殺したら、私、結婚どころではなくなるんですけど…」


「そんなこと言っていると、本当にやっちゃうかもね…。まあ、冗談だけど…」


「それにしても、一途な思いも方向を間違えると、自分も周りも不幸になるよね。一途な思いを利用して、相手を振り回したり、人の幸せをぶちこわしたり…。本当にひどい…」

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