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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第3章 決着
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2月29日(水)  ◎3◎

「今回の福岡出張は、私、桜田が四月から出向することになるビオランテ出版での総務主任引き継ぎを目的として行われました。これから出張中に行った業務内容について説明致しますので、まずは出張報告書をご覧になって下さい」


 紫がそう言うと沢木と大芝の二人は報告書に目を通し始めた。A4版で三枚半になる報告書では、二週間かけて行われた引き継ぎや小規模出版社ならではの担当を超えた全社員による一体業務体制などが書かれている。


 一方でビオランテ出版の根幹に関わる内容については一切触れていない。総務と言う仕事の特性上、全てをありのままに報告すれば、紫が産業スパイになりかねないからである。事前に沢木部長とビオランテ出版の七島社長から報告に書かないよう言われていた。


「なるほど、わかりました。確かに報告書を受け取りました。これなら、安心して出向に出すことができます」


「ありがとうございます」


「ところで桜田さん、明日は代休を取られるんですか?」


「はい」


「わかりました…。それでは、ゆっくり休んで出張の疲れをいやして下さい。ここで働くのも、あと一ヶ月足らずですが、最後まで気を抜かずに頑張って下さいね」


「はい、わかりました」


 これで出張報告書の提出と尋問が終わった。沢木が終始満足そうで本当によかった。大芝もホッとしたのか、人事部長室を出たとたん、大きく息を吐いている。


「無事に終わってよかったですね。引き継ぎ、うまくいったようでよかったですよ。次はこっちの引き継ぎをお願いします」


「わかりました。ありがとうございます」


「ところで、水戸さんが結婚のため、三月で辞めることになりました。これは桜田さんが出張中に決まったことですが、あまりにも急だったので、大変でしたよ。急遽、人が足りなくなったので、大泉さんに新体制の班長補佐として残ってもらうことになりました。次の総務班長に決まった山部さんが総務の仕事が分からないので、補佐を入れてくれって言い出したので…。まあ、今の体制から新体制にうまく移行させることが、私の最後の仕事ですからね…」


 えっ、何だって? 水戸あおいが結婚? 武下定秋と結婚するのか? あまりにも突然の新情報に紫は目が点になる…。せっかく、福岡出張から帰ってきて、出張報告も終わってホッとしていたと言うのに…。


「課長、水戸さんは誰と結婚すると言っていましたか?」


「えっ? 詳しいことは聞いていないけど、どうやら外部の人と結婚するらしいですよ…」


 ますます、意味が分からなくなった…。紫はもう何が何だかよくわからない…。二週間の間に一体何が起きたと言うのか? 大芝と総務課に戻った後、紫は福岡のお土産を総務課のみんなに配って回った。それが終わると、体調不良を理由にさっさと会社を後にする。


「慣れない土地での仕事は大変だったでしょう…。きっと、疲れているんだね。早く帰ってから、ゆっくり休みなさい」


 大芝課長が珍しく優しく声をかけてくれた。紫はその優しさすら思わず疑うほど、誰も信じられなくなっていた…。大芝は何も悪くない。悪いのは武下定秋と水戸あおいだ。こんな会社、もう嫌だ。一日も早く離れたい…。紫はそう思った。

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