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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
59/150

2月28日(火)  ★1★

 二週間にわたる福岡出張も残すところ、あと一日となった。二週間かけて、本業の総務主任の仕事はもちろんのこと、取材や営業など様々な仕事の担当者について回った。ビオランテ出版は総勢十人のこじんまりとした会社だからこそ、全員の仕事を把握して、お互いを支え合わないといけない。完全分業制のエスペランサ出版ではまず味わえない世界である。


 現総務主任の井出は紫に対して、

「もう安心して、四月から総務主任の仕事を任せられる」

と言っていた。


 ただ、紫が四月からここに出向する時、井出はもういない。井出は妻の介護のため、三月で定年退職することがもう決まっている。


 他の社員とは四月にまた再開できる。七島社長を始め、瀬々串専務、学習教材担当の河浦、営業担当の尾辻、取材班の猿渡・牧本・稲森、編集班の大畑・柿本の九人と四月からここで一緒に仕事する。


 そう思うと、紫はもっと頑張らないといけないと感じるのであった。また、紅一点の稲森とは公私に関係なく、もっと仲良くなっていくだろう。いい所へ出向が決まって本当によかった。紫は仕事しながらしみじみと思う。


 明日は十一時五五分の飛行機で東京へ帰るので、ビオランテ出版で一日中仕事できるのはこの日が最後になる。この日の昼は七島、瀬々串、井出の三人に誘われたので、ついていくことにした。


 紫はその日に一緒に仕事していた人と、そのまま昼食を食べることが多かった。これまで社長を除いた全員と最低一回は一緒に食事している。しかし、この日のように社長、専務、総務主任の三人との昼食となれば、また意味も違ってくる。紫は少しばかり緊張していた。


「そんなに緊張せんでもよかですよ。まあ、こうやって一緒に食事できるのも、今日で最後ですけんね。それに夜だと井出さんが来れんですから…」


「社長、そんな言い方は止めて下さいよ…。確かに私は妻の介護で残業はほとんどできないし、夜の付き合いに至っては、全く参加できていません。しかも、三月で定年を迎えて、これからは介護に専念します。本来なら、どうにかして会社に残らなければならなかったのに…。これも社長のご理解と出向を引き受けてくれた桜田さんのおかげですよ」


「ま、社長も井出さんもそんなに硬くならずに、まずはおいしいご飯を食べましょうよ。ここの明太子定食は本当においしいですからね。桜田さんも緊張せずにリラックスして下さいね」

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