2月23日(木) ‰3
だんだん、様子が変わってきたように感じる。一方で、社長がわざと否定的な質問をすることで、レーシックのどこに焦点を当てるかを定めようとしているようにも思えた。それとも、視力矯正と言う大きなテーマでやろうとするために視野を広げさせようとしているようにも思えた。
「社長、おっしゃる通りですが、それらを記事に書いた上で、レーシックの利点も書けば、何も問題ないと思いますよ。最終的な判断をするのは、我々ではなく読者です」
ここで取材班の牧本が反論した。どうやら、取材班は三人とも賛成のようである。編集長の大畑がやたらと頷いていた。
「メガネも一年に一度ぐらい新調すれば、十年で二十万ぐらいかかりますよね。コンタクトレンズであれば、もっとお金がかかるでしょう。それが二十万出して手術すれば、いらなくなるなら安いと考える人も出てくるでしょう。桜田さんのようにね…」
井出がメガネを光らせながら、紫の意見を援護する。もちろん、取材班も編集長もやたらと頷く。
「さすが井出さん。お金の話になれば、総務主任の右を出る者はいませんね。私はレーシックを実施している眼科医のインタビューを入れたらいいと考えますね。あと、公平にメガネ屋やコンタクトレンズを処方する眼科医の話も聞いたらいいと思います」
営業の尾辻が言った。このように取材班だけでなく、様々な部署が会議に参加することで、多様な視点から意見が投げかけられ、多様な視点を膨らませて考えることができる。このような感じで話がどんどん広がり、最終的には
「どうする? これからの視力矯正?」
と言うタイトルでレーシック、メガネ、コンタクトレンズ、矯正コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)などについて考えさせる内容で話を進めることとなった。取材はそれぞれの視力矯正法や担当者の話、街角アンケートなどを行う。その上で読者に特定の考えを押し付けるのではなく、読者にあらゆることを考えてもらう内容の記事を書くことが決まった。
このようにして、一つ一つの記事や特集の方向性を社員一丸となって考え、決めていくのは紫にとって、本当に新鮮であった。エスペランサ出版ではまず体験できない。ビオランテ出版のこじんまりとした一体感に、紫はすっかり取り込まれていた。




