2月23日(木) ‰2
ふと、紫はかつてレーシックをした時に、レーシックに関する情報が少なかったことを思い出した。タウン誌でレーシックや最近のメガネ・コンタクトレンズ事情について、特集するのも悪くはないと思う。紫はダメ元で思い切って提案してみることにした。
「あの…、私から提案させて頂いてよろしいでしょうか?」
「桜田さん、構いませんよ。ぜひ、聞かせて下さい」
社長がそう言うと、他の社員も一様に頷いた。紫はビオランテ出版に新しい風を吹き込むべく提案した。
「レーシック特集と言うのはどうでしょうか? 実は私、一ヶ月ほど前にレーシック手術を受けました。それまで二十年近くずっとメガネをかけていましたが、一念発起して、レーシックを受けたのです。ただ、日本ではまだレーシック手術を受ける人が少ないため、情報がほとんどありません。また、最近はメガネ男子などのようにメガネが一つのファッションとして認められています。目が悪い人はメガネ、コンタクトレンズ、矯正コンタクト(オルソケラトロジー)、レーシックなど、自分にあった視力矯正ができるようになったのです。そこで特集を組めば、それなりの反響があると思われます」
「それはいい考えです。さすが、桜田さん。東京からいい風を吹き込んで下さいましたね…。今までそのような企画をやったことが無かったので、取材班長として、ぜひ後押ししたいですね」
取材班長の猿渡が思いの外、納得していた。他の人達も納得してくれたのか、大きく頷いている。紫は突然の思いつきながら、確かな手応えを得たことを嬉しく感じた。
「もし、やるなら、『ちょ真』のコーナーですね。企画が通るかどうかは別にして、私は個人的に興味があります。多分、日本人の多くが関心を持っているのではないでしょうか?」
「猿渡さんも、稲森さんも、乗り気なようだけど、私はどうかなと思うよ…」
社長が否定的なことを言い出したので、紫は驚いた。ところが他の社員は平然としている。連載会議では一つ一つの企画を多角的に検討するのだから、多少のことでは動揺してはならないのだろう。初めての連載会議で紫は少し舞い上がっていたのかもしれない。
「桜田さん、レーシック手術には確か保険は適用されませんよね…」
「はい…」
「つまり、それなりにかかると言う訳ですね」
「はい、私の場合、両目で二十万ほどかかりましたから…。相場はだいたい…それぐらいです」
「あと、レーシックはまだ治療が始まってから、二十年ほどしか経っていないから、まだ完全に安全かどうかの実証が完全になされていませんよね」
「はい、確か、手術医から、そのようなことを説明受けました」




