2月23日(木) ‰1
この日は朝から「月刊HAKATA」五月号の連載会議が行われた。もちろん、連載会議に全員参加なので紫も参加する。
「ああ、君が桜田紫さんですか…。どうも、ここの社長をしております七島と申します。東京ではエスペランサ出版の土肥社長や沢木部長にお会いしましたよ。君のことをよろしくと頼まれたからね。総務主任の仕事は大変だと思いますが、よろしくお願いしますよ」
「あっ、社長! こちらこそ何卒よろしくお願い申し上げます」
連載会議前、昨晩東京から戻って来たばかりの社長と初めて出会った紫は、社長と直に会って話せるのも小さな会社のいいところだな…と感じた。
エスペランサ出版で社長に会って話したのは、十年前の採用試験の最終面接の時ぐらいである。あとは年始や年度始めの挨拶の時に遠くから見かけるだけである。沢木部長とだって、今回の件が無ければ、まず話す機会なんて無かったはずだ。
会社に人がいればいるほど、残念ながらトップと末端との距離は遠くなる。それに社内で全く関わりがなくて知らない人も増えていく。それを考えれば、小さな会社はいい。トップと末端が近くならざるを得ないし、社内のみんなとも必ず顔見知りになるだろう。
連載会議に全員参加と言うもの、実に素晴らしい。エスペランサ出版で総務担当が雑誌の連載会議に出席するなど、まず考えられない。実に貴重な体験をさせてもらっていると、紫は強く感じた。
「月刊HAKATA」の主なコーナーは「ぶらっと町歩き」、「ちょっと真面目なワンポイントレッスン」、「月変わり観光の勧め」、「大好き福岡」の四つである。三日前の月曜日、稲森と一緒にスイーツ点の取材をしたが、あれは「ぶらっと町歩き」の連載の一部となるらしい。また、「ちょっと真面目なワンポイントレッスン」では井出の経験をふまえて、介護にスポットを当てた月もあったとのこと。
紫はタウン情報誌を扱う出版社で十年も働いていながら、「TJ浜っ子」や「東京タウン」などについて一度も真面目に考えたことがなかった。いや、総務にいると言うだけで考える必要がないと勝手に思い込んでいた。よく考えれば、タウン情報誌の売り上げで生活をしているのだから、総務とか関係なく、もっと積極的に関わってもよかったのかもしれない。




