2月22日(水) 1⏎
一昨日は本当に楽しかった。稲森と一緒に天神のスイーツ巡りをした。「デュルセ・デ・パライソ」、「ガトー・ブッセ」、「エカルラトゥ・ハウス」、「カフェ・ソーニョー」の四つの洋菓子店の目玉商品や春の新商品の取材をしたのである。
取材後は他の社員へのお土産を持って、会社に戻った。社員みんなで和気あいあいとした雰囲気の中、四つの洋菓子店の食べ比べをする姿を見て、エスペランサ出版ではすでに失われたものを取り戻したような気がした。社員による食べ比べの内容もしっかりと月刊HAKATAの記事の一部になるから、社長と稲森を除いた八人の社員も真剣である。まあ、社員二五〇人で取材のお土産を分け合うことは、まず不可能なので仕方がないか…。
昨日はまた一日中、井出の元で総務の引き継ぎを行っていた。時々、瀬々串専務も入っての引き継ぎ指導を紫は受ける。社員の動静・勤惰管理は専務の担当だが、専務が不在の時は総務主任の仕事になる。また、総務主任が不在の時は専務が総務の仕事の補助に入ることとなっている。
このように何かがあった時のバックアップ体制を充実させることが、小さな会社では必要不可欠である。エスペランサ出版のようにたくさん人がいれば完全分業制が効率いいが、ビオランテ出版のような小規模の会社ではお互いを相互に支えるシステムがしっくりくる。その考えの延長上に一昨日のような担当枠を超えた取材がしばしば行われることとなる。
この日もその考えの延長上の動きをした。昼から学習教材担当の河浦と新学期の学習教材を持って、書店巡りをしているのである。河浦によれば、事前に福岡県書店連合会で教材説明会をしており、今回は注文品へと向かっていた。二人は博多の事務所を出て、そのまま福岡ドームのある早良区へと向かっていた。この日は西区にある四つの書店に行くこととなっている。
正確に言うと、学校に直接注文を取るのは、それぞれの地域の書店である。学校から注文を取った書店が、ビオランテ出版に学習教材の注文をする。それを受けて、ビオランテ出版から書店に納める。それを各々の書店が学校に納めるシステムである。
ちなみに学習教材の開発は九州教育研究会が行っており、開発された教材を研究会からの委託を受けて、ビオランテ出版が出版するのである。そのため、学習教材に関して、ビオランテ出版は出版と取次を一手に引き受けるシステムとなっている。また、教材売り上げの十%は研究会に教材開発料として納められる。
紫はエスペランサ出版にはない学習教材を扱うことがとても新鮮に感じられた。今後、総務主任としてお金のやり取りの中で、経理として学習教材と関わっていくことになるので、しっかり覚えなければならない。紫は一つ一つをしっかり頭に刻み込む。
得意先を一通り回った後、河浦が運転する営業車の中からぼんやりと福岡の町並みを眺める。福岡の街は必要な物がコンパクトに集まっていて、本当に便利だと感じた。
東京のように人も多過ぎないし、街もごちゃごちゃしていない。食べ物もおいしいし、少し街を離れれば豊かな自然もある。その上、気候も東京に比べれば、温暖で過ごしやすい。新しい生活を始めるのに、これほどふさわしい街があるだろうか…。




