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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
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2月11日(土)  ≪2≫

【注意】今は成分献血の受付で原則として、体温を測ることはありません。

 午後二時過ぎ、紫はマクドナルドを後にした。それから五年ぶりにあの場所へと向かう。それは献血ルームである。かつて、武下定秋と付き合っていた頃は、一度も行けなかった…。なぜなら、武下定秋は血が大の苦手である。


 昔、まだ付き合い立ての頃、紫がこれまでに百回以上献血してきたと話しただけで、奴の顔が青ざめていた。それに気付かず、紫は長々と献血に関する武勇伝を話し続けたら、奴は気絶してぶっ倒れてしまったのである。


 あの頃は、何が何だか全く分からずに本気で心配した。武下定秋が何かの病気でぶっ倒れたと勘違いさせられた。その後、原因が分かって、二人で大笑いした…。そんな遠い昔のことを思い出してしまい、紫は急に泣き出したくなった。よりによって献血ルームでそんなことを思い出すなんて…。紫はしばらく涙を必死でこらえなくてはならなくなったほどである。


 五年ぶりの献血…。まず、献血ルームに入るとすぐに受付があるので、受付を済ませる。その前に入り口横のロッカーにジャケットとバックを入れる。ロッカーはもちろん無料である。受付で献血カードを出す。これまでしてきた献血回数十十六回。最後に献血したのは平成十九年三月二五日であった。思えば、この年の四月から奴と付き合い出したのか…。今日は平成二四年二月十二日である。もし、付き合い続けていれば、四月には五回目の記念日を迎えたはずなのに…。


 紫は受付で渡された問診票を書きながら、今となってはどうでもいい昔を振り返ってしまった。書くと言っても、実際はタッチパネルを押して答えていくだけである。全てを答えてから、印刷ボタンを押すと勝手にマークシートを塗ってくれる仕組みになっている。


 基本的には最初の質問である「本日の体調はよろしいですか?」以外はすべて「いいえ」と答えられなければ献血できない。今のシステムでは、平成八年以前にイギリスに一日でもいた人や、マラリアにかかったことのある人は、どんなに献血したくても一生献血できないことになっている。


 紫は何一つ問題なく、問診票をクリアした。それから成分献血をするため、体温を測るように受付で言われた。言われるがまま、体温計を左わきに挟むと、何とも言えない懐かしさがこみ上げてくる。


 献血ルームは混んでいた。東日本大震災の後、ちょっとしたボランティアとして、献血への関心が高まっていると聞いていたが、まさに噂通りである。インフルエンザの流行で献血者は減っているらしいが、待合室の盛況ぶりを見る限りでは問題なさそうである。


 ピピピ…。体温は三六度三分。よし、問題ない。体温計を受付に返して、本日の体温を告げると、本日は混んでいるので、一時間ほど待つように言われた。さて、バックから本を取り出して下流の宴の続きでも読むか…。


 その前に待合室に置かれている飲み物とお菓子を取りに行く。飲み物も無料で好きな物が選べるようになっている。飲み物はお金のいらない自販機が置いてあり、飲みたい物のボタンさえ押せば、好きな物が飲める仕組みである。


 食べ物はチョコレートやクッキー、飴、せんべいなどが自由に取れるように置いてあり、両端に置いてある小さなカゴに食べたい物を入れてから、各々が持って行くシステムとなっている。お菓子と飲み物を用意したら、空いている席に座って、医師の問診を待つ。

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