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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
24/150

1月25日(水)  ◎1

 この日はおはらい有休のため、平日なのにゆっくりした朝を迎えた。周りが慌ただしくしていると言うのに、自分だけがゆったりできると言うギャップがたまらない。平日の朝に台所の棚からコーヒーメーカーを出して、コーヒーをいれてみたり、贅沢に温泉の素を入れたお風呂に朝から浸かったりした。気持ちがゆったりとするだけでも、悪い物がぬけて、これからいいことが起こりそうな気になる。


 もちろん、このまま家でダラダラしてもいいのだが、せっかく課長がおはらいに行くように言ってくれたのだから、神社に寄ってから江角眼科クリニックへ行くことにした。確か、家の近所におはらいで有名な窪園神社があったはず…。近所にあると言うのに、これまで一度も寄ったことがない。この機会に思い切って自転車で向かう。


 自転車で走らせること十分、神社に着くと平日と言うこともあり、訪問者は数えるほどしかいなかった。こんな所でおはらいしたら、かえって運気が落ちそうな気がする。本当に大丈夫なのか…。こんなことなら課長におはらいで有名な神社とか、おはらいの仕方とか聞いておけばよかった…。


「あの、すみません。厄年の厄払いに来たのですが…」


「ああ、初穂料はこちらのようになっておりますけど、いかがなさいますか?」


 そこには一万円で神主と一対一での祈祷と名前入りのお札の受け取り、五千円と三千円だと対象者全員をまとめての祈祷で、五千円だと名前入りのお札、三千円は市販のお札をそれぞれ受け取ることになっている。紫は迷う間もなく、一番安い三千円のコースに決めた。


「あの、三千円のコースでお願いしたいのですけど、何時から行われますか?」


「我が神社では、朝十時と昼三時の一日二回行っております。もし、それ以外の時間を希望されるのであれば、大変申し訳ありませんが、一万円のコースとなります」


 受付の巫女は何食わぬ顔で一万円のコースを進めてくる。これは神主の教育によるものだろうか…。だとしたら、ここの神主はかなり強欲である。紫は窪園神社に九時半過ぎに着いたのだから、普通は朝十時からどうぞと言うべきだろう。


「いやいやいや、三千円のコースを朝十時から申し込みますので…」


「そうですか…。それでは初穂料三千円となります」


 巫女は少し残念そうに三千円を受け取る。その後、そのまま本殿に上がるように言われたので、紫は順路に従って、奥の会場までに進んだ。それから、おはらいが始まるのを待った。場所が場所なだけに、さすがに携帯電話を開いて暇つぶしをするのは気が引ける。本ならいいだろうと思い、1Q84の続きを読もうとした時だ。


 突然、神主が現れた。見た目は全く強欲ではないが、受付の巫女とのやり取りがあったので、実は強欲なのだなと勝手に思った。時計を見ると、十時五分前である。紫以外、会場には誰もいない…。


 そう言うと、神主はおもむろに護摩と線香を焚いて、白い紙がついた何かをおもむろに振りだした。耳をすますと何かの呪文を小さな声でつぶやいている。一通り終わった後、お札が渡された。護摩と線香の香りが強く移っている。


「さあ、終わりましたよ。それにしても貴方は幸運です。本来であれば、十人とか二十人

とかまとめておはらいするところなのに、他に誰もいないので一対一でのおはらいができました。やはり、一対一の方が厄払いの効果は強いですからね…」


「ああ、ありがとうございます」


 わずか三分足らずで終わってしまった。あまりにもあっけなさ過ぎて、これで本当にご利益があるのだろうかと疑わずにはいられない。紫は何か間違ったことをしたような変な気持ちであった。

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