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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
23/150

1月24日(火) ☆2

 昼休みが終わり仕事に戻ると、武下定秋と水戸あおいが総務課で何やら話している。紫にとっては二人を見るだけでも気分が悪くなると言うのに…。なんと、武下定秋と目が合ってしまった。陽美と一緒に戻って来て、本当によかった。


「武下君、昼休みなのに、総務課に何のご用ですか?」


 たまりかねた陽美が武下定秋に尋ねる。まあ、何をしに来たのか、何となく分かるが…。


「久留米さん、すみません。急ぎで出張旅費の精算をしないといけなかったもので…。たまたま、水戸さんがいたものですから…、水戸さんにお願いしていたところです」


 ああ、白々しい。何でそんなに分かりきった嘘をつくかな…。昔、付き合っていただけに、武下定秋の手の内が全て見えている。


「いくら急ぎでも、昼休みに来るなんて慌て過ぎですよ。偶然、水戸さんがいらっしゃってよかったですね」


 紫もここぞとばかりに陽美の加勢をした。それはもう皮肉たっぷりに言い放つ。鋭い目つきで二人を睨みつけながら…。


「あれっ、桜田さん? 雰囲気変わりましたね…」


 急に武下定秋の様子が変わった。紫はその一瞬を見逃さなかった。やっぱり、男は女の外見しか見てないんだ…。


「さだ…じゃなかった…武下さん。桜田さん、レーシックされたんですよ」


「ああ、なるほどね。メガネを外すとやっぱり違うな…」


「もう、武下さんたら…。もう、用件は済んだでしょう。早く戻らないと営業課で怒られますよ」


 水戸あおいがそう言うと、武下定秋はさっさと総務課を後にした。その後、どう言う訳か、水戸あおいはブスッとしていた。どうやら、紫に気を取られたのが、気に食わなかったらしい。泥棒猫のくせに…。


 紫は立場が逆転した今、かつて水戸あおいがしたようなことをしてやろうかとも思った。しかし、コロコロと付き合う相手を変えるような最低の奴とよりを戻すなんて、こちらから願い下げである。ただ、一方でレーシックをやってから、周りの反応が変化したことが楽しくて仕方なかった。これは面白い…。紫は何度もそう思った。

 仕事上がりに紫は陽美とラーメンを食べに行った。ラーメンを食べる時にメガネがないので、メガネが曇ることがない。メガネがないことがこれほど素晴らしいことだとは思わなかった。紫にとって、これは言葉では言い表せない感動である。

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