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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
21/150

1月23日(月) ※3

 月曜日の朝から、総務課は不真面目な空気に包まれていた。リストラの悪い効果が出ている。大泉班長の発言に押されて、「おはらい有休」を取りたいと言う者が続出である。そのために紫は切り込み隊長をさせられることになった。そこで課長が戻る前に残ったメンバーで打ち合わせをする。すると、いいタイミングで課長が戻って来た。


「課長、確認ですけど…、おはらいをするために有休を取ってもいいんですか?」


 まずはさっきの発言が冗談でないかどうか確認する必要があった。万が一、冗談であった時はここでさりげなく会話を終わらせることになっている。


「桜田さん、君は真面目ですね…。私が冗談なんて言う訳ないでしょう。ああ、こんな人材をリストラするなんて、エスペランサ出版は本当に馬鹿ですよ。私がいいと言ったのだから、いいに決まっているじゃないですか…。どうせ、三月で会社を辞めさせられる訳だし、最後ぐらい、やりたいようにやらせてもらわないと…」


 またしても、周りがざわついた。これで課長のご乱心が確定した。人間と言うのは当たり前の日常が壊れただけで、簡単に豹変するものである。守るべき物がなくなると、人間どうなるか本当に分からない…。


「では、明後日…。水曜日におはらいに行ってきます」


「分かりました。後で有休申請書出しておいてください。申請理由がおはらいだと、さすがにまずいので、理由は身辺整理とでも書いておいてください。そう言う訳ですので、今後申請があった際は班長の皆さんも何も考えずに承認印を押してください。責任は私が持ちますので…」


 まさに総務課で「おはらい休暇」が正式に認められた瞬間でもあり、昼行灯と呼ばれた大芝課長が初めてトップダウンで物事を決めた瞬間でもあった。


 おかげで紫は水曜日にどういう理由で休んで、江角眼科クリニックに行こうか悩まずに済んだが、こんなことがあっていいものか、どうか考えずにいられない。その後、夕方までに全てのリストラ・出向組が「おはらい有休」を申請して、全て課長の許可が下りた。さらに課長もおはらい有休を取るらしい。


 こうなるともはや、「おはらい有休」と言うよりは「リストラ有休」である。課長裁量により、一日一人と決まったので、明日から一人ずつ取ることになった。不思議なことがよくもまあ続くものである。

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