さらば日本
「ウォオオオオ! おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
空港はルーカスと美穂が結ばれた事で拍手喝采。
有り難う。本当に、有り難う。
「美穂、私は一つ気づいた事がある」
「なんです?」
「私は、やはり国境を無くしたい。国境を越えて人と人とが助け合える。そんな世界を作りたいんだ」
ルーカスは確信した。色々な問題はあるけど、きっと人と人とは国境を越えて助け合える。
だって今日が、そうだったから。
「はい。とっても良い夢だと思います」
美穂はルーカスの夢を肯定してくれた。
彼女を選んで本当に良かった。
「美穂、これを持っていてくれないか」
ルーカスは美穂にネックレスを渡す。
「これは?」
「これは母上が持っていたネックレスだ。美穂に渡したい」
それはルーカスの母親が持っていたネックレス。
これを彼女に渡そう。
ルーカスは、そう思った。
「有り難う。ルーカス」
ルーカスは美穂の首にネックレスを巻く。
「うむ。やはり似合っているぞ」
ネックレスは美穂の首元で二人を祝福するように輝いていた。
「美穂。私はメルベールに帰らないとならない。しかし私が、もっと大きくなり夢を叶える時になったら、君を必ず迎えに行く。それまで待っててくれるか?」
それは約束であった。美穂の事は必ず迎えに行く。
彼女はなんと返すだろう?
「はい。いつまでも待っています」
彼女はOKを出してくれた。
それから三年の月日が流れた。
「いや〜、めでたい。こんなにめでたい日はないですぞ」
ビッシュは、メルベール王宮にある自室にて感無量であった。
なんせ、今日はルーカスの父親であるルドルフ王が引退。
その王位がルーカスに引き継がれる日であった。
「あの小さかった王子が国王にならせられる。こんなにめでたい日はないですぞ」
ようやく自分も世話係りという大役を降りる事となる。
それは寂しいような嬉しいような感じがした。
「ビッシュ様〜、大変です」
王宮の執事の一人がビッシュの部屋にやって来た。
「む? なんだ」
「大きなニュースが二つあります」
「なんだ?」
「日本の岸峰総理が辞職するそうです」
後々、分かった事だが、三年前の日本でのルーカス王子殺害事件には岸峰総理とフリン内務大臣が関わっていたらしい。
フリン内務大臣は当然、メルベールの地下牢獄に入れられている。
日本の岸峰総理は、どうする事も出来なかったが、辞職とあっては、もうルーカスに手を出す事はないだろう。
「ふむ。フリン内務大臣と同じ道を辿ったか。自業自得じゃ」
さて、もう一つの内容が気になる。
「で? もう一つは?」
「戴冠式直前なのに、ルーカス王子の行方が分かりません」
「何〜〜!?」
「はい。これ、みかん。一つね」
八百屋『ハリー』にて、ルーカスは、また、ハリーおばさんの手伝いをしていた。
「今日も手伝ってくれて有り難うね。王子。でも今日は戴冠式だろ。行かなくて良いのかい?」
本当は行かないと駄目なのだが、ああいう堅苦しい場は、ルーカスは、どうにも苦手であった。
「ん〜、面倒なんだよなー、ああいう場は」
こうして、八百屋の手伝いをしていた方が気楽。
ルーカスは、そう感じていた。
「王子、王子、どこですか? どこに行ったのですか〜?」
遠くからビッシュの声が聞こえる。
ヤベ、またバレるぞ。これ
「王子! やはり、ここにおりましたね。探しましたぞ」
「ビッシュ、君は見つけるのが早いな」
「戴冠式前ですぞ。なにを、こんな所で油を売っているのです」
「ビッシュ、戴冠式より今は、店の売り上げの方が
大事だ」
「大事な訳ないでしょ……。戴冠式に、参加して下さい」
ビッシュは呆れたように、ため息をついている。
「今日は王妃様も、おいでです。早く参加して下さい」
王妃? 王妃とは一体誰だ?
母上はルーカスが小さい時に他界している。 父上は、それから結婚していない。
「王妃? 王妃って一体誰だ?」
気になったルーカスはビッシュに問いかけた。
「おや? ルーカス様、お忘れですか」
「?」
「お久しぶりです。ルーカス」
ビッシュの陰に隠れていた女性が姿を現す。
それは紛れもない美穂であった。
「君は……美穂」
「ふふふ。ルーカス。来ちゃいました」
思わぬ再会に、流石にたじろぐルーカス。
しかし、直ぐに喜びの感情が溢れてきた。
「美穂、久しぶりだな」
「ルーカス。それより言う事があるんじゃないですか?」
言う事。それは確かに一つかもしれないな。
「美穂。三年も待たせて済まない。私は国王になった。これから私の夢に向かって動くつもりだ。美穂、私と結婚してくれ」
美穂以外の女性と結婚する事は考えられない。
ルーカスは彼女にプロポーズをした。
「はい。お願いします」
美穂は、そう返事をした。
商店街の人々。いや、メルベール中の人々が二人の結婚を祝福した。




