09 賭けの反省
アレクサンダーの死亡が確認されると、棄権者が出た。
魔法組十六人を残して全員が棄権した。
剣が砂に落ちる音。
両手を上げる姿勢。
審判がすぐに数を数える。
「十六人確認! 規定人数到達! 終了!」
早い。
早すぎる。いいのか?死んでないぞ。
俺はまだ、試し終わっていない。魔法組の杖を全部破壊しておきたかったのに。
砂の上に立っているのは十六人。
俺を含めて、だ。
観客席はざわついている。
歓声とも不満ともつかない波。
でも、息が上がってきた所だったから、よしとしよう。
最初に死ぬやつへの賭けは成立した。
アレクサンダーは確実に最初だ。
だが問題は、そこじゃない。
控室へ戻る途中、賭け札のことを計算する。
俺は二つ賭けている。
アレクサンダー最初の死亡。
そして、ジョナサン勝者の一員。
最初の死亡は当たり。
だが、窓口で札を受け取った時点で気づいた。
真似して賭けたやつが多いなんて当たり前だなと俺は小さくつぶやく。
そうだ。
俺が堂々と窓口で宣言したせいだ。
「アレクサンダー、最初に死亡」
あの瞬間、ざわついた。
そして数人が後から同じ札を置いた。
倍率が下がった。
配当は悪くない。
だが――期待値より低い。
最初に死ぬのは剣組から出るのが常識だろう
だからこそ大穴だったはずだ。
だが俺が目立ちすぎた。
堂々としすぎた。
真似された。
……失敗だ。
戦場で学んだだろう。
情報は隠せ。手の内は見せるな。
俺はうっかり見せてしまった。
そして、庶民は敏感だ。匂いを嗅ぎつける。
賭け窓口の前で聞こえた声が蘇る。
「今日の流れはおかしい」
「中央のやつ、何かある」
その時点で、気づくべきだった。
控室の椅子に腰を下ろす。
体は震えている。
疲労だ。
この貧弱な体は限界に近い。
だが俺ががっかりしているのは、そこじゃない。
もっと取れた。もっと搾り取れた。
もっと盤面を支配できた。棄権が出来るなんて聞いてない。知らなかった。
それでも貴族か?と叫びたい。
俺は砂の上で勝った。
だが賭場では、半勝だ。
悔しい。
「……次は静かにやるか」と俺はつぶやく。
一日休みを入れて、次の試合は勝ち抜き戦。
賭けは、戦場だ。
砂の上の殺し合いよりも、よほど冷たい。
俺は天井を見上げる。
棄権者が出たことで、俺は楽をした。
命のやり取りは最小限。
教えておいて欲しかった。死ぬのはいやだから殺したのだ。
棄権でいいのか? ルールを教えて貰わねば。
明日、家の誰かに教えて貰おう。
俺はアレクサンダーの杖を撫でながら考えた。
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