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公開処刑のはずだった闘技大会、元軍人が参加したせいで戦場になった  作者: 朝山 みどり


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08 二日目

08 二日目


翌日、控室にいたのは七人だった。包帯をしている者もいる。


昨日より少ない人数のせいで、空間がやけに広く感じられた。

二手に分かれ、小声で何かを話し合っている。


なるほど、手を組んだか。


全員、武器を持っている。

剣、短槍、斧。昨日より殺意が明確だった。


手ぶらの俺を見て、全員がにやりと笑う。



時間になり、名前を呼ばれた。一斉に外へ出る。


砂はあたらしくなっているが、血の匂いはまだ残っているような気がした。

観客のざわめき。昨日より熱がある。俺のせいだ。


係が昨日と同じ剣を渡してきた。


重い。本当に重い。


魔法の腕を伸ばし、柄を掴ませる。

本物の手は添えるだけだ。まったく、体を鍛えなければ。


視線を巡らせる。


魔法組は固まっている。二十三人、多くないか。

そして――いた。


アレクサンダー。


肖像画と同じ顔。自信ありげな顎の角度。

上等な杖を持っている。あれを貰おう。気に入った。



砂時計がひっくり返された。


合図と同時に、剣組が全員で切りかかってきた。


予想通りだ。殺してはいけない。

いや、今日は殺すが、いまじゃない。


俺は応戦しながらアレクサンダーを観察する。


動きは型通り。

後衛に下がり、詠唱の準備をしている。

守りを固めるつもりか。


そばにいた男の剣を、魔法の腕で奪う。

驚く暇も与えず、投げた。


狙いは喉。


だが、外れた。肩に刺さる。


「アレクサンダーがやられたぞ!」と誰かが叫ぶ。


混乱が広がった。


大部分がアレクサンダーの守りに回る。


俺への攻撃が緩んだ。



いい、間抜けっぷりだ。



透明な腕を伸ばす。

自分の剣を、静かに、正確に。


アレクサンダーの喉を斬った。


抵抗はなかった。



血が弧を描く。観客が沸く。


「最初だ!」「もう決まったぞ!」


ああ、そうだ。最初だ。


アレクサンダーは目を見開いたまま崩れ落ちる。


俺はすぐに動いた。


魔法組の杖を狙う。


振り回すのではなく、打つ。叩き落とす。


一人の杖が飛んだ。砂に転がる。


ついでにアレクサンダーの杖を拾う。


軽い。


上質だ。魔力の通りがいい。構造が素直だ。


「ジョナサンが杖を持ったぞ!」と誰かが叫んだ。


遅い。


俺は剣組の一人を狙う。


風の刃。


構築は単純だ。

圧縮、方向付け、解放。


刃が飛ぶ。


狙いは首筋。


だが外れた。まったく、ジョナサンの不器用者め。


軌道がずれ、審判の袖をかすめた。


布が裂ける。審判が飛び退く。


思わず舌打ちが出た。ちゃんとよけろ。


場が一瞬、凍る。


次の瞬間、歓声が爆発した。


「審判も危ないぞ!」「いいぞ、もっとやれ!」


観客は血を求めている。


全員が一丸となって俺に向かってくる。


当然だ。俺はいま、賭けを成立させた男だ。


アレクサンダーは動かない。

審判が確認に向かう。


「死亡確認!」


宣言の声が飛ぶ。観客席が揺れた。


俺の口元が、わずかに上がる。


第一目標、達成。


だが、まだ終わりじゃない。


次は生き残ることだ。


全員の視線が俺に集まる。


いい。わかりやすい。


戦場でもそうだった。

全員がこちらを見る瞬間こそ、最も読みやすい。


俺は杖と剣を持ち替え、透明な腕をさらに伸ばす。


盤面は整った。あとは削るだけだ。


今日は俺が流れを作る。


ジョナサンとして。


ジョンとして。


そして――生き残る者として。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

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