↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公開処刑のはずだった闘技大会、元軍人が参加したせいで戦場になった  作者: 朝山 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/20

12 勝ち抜き戦 第七試合


ダグラスは運が向いてきたと思った。


あの方の訪問の日から、胸の奥が熱かった。


貴族とは名ばかりの彼の家にアレクサンダーの父親は、現れた。


香の匂いをまとい、静かな声で言った。


「今年の出場者のなかで一番実力のあるのは、ダグラス。君だ。だからあの男と戦って殺して欲しい。ひと思いではなく、ゆっくりと。報酬は期待してくれ。君は一回戦で必ずあの男と当たる」


ダグラスはアレクサンダーを知っていた。全てを持っていた男だ。高位貴族の三男、両親、兄、姉に可愛がられていると知っていた。


ダグラスはうなずきながら内心で笑った。


ジョナサンは強くない。あれは偶然だ。


杖を手放した魔法使いに剣組が群がった。杖を持ってないから仕方なかった。たまたま中央にいただけ。火の玉を押し返した? あんなものはまぐれだ。


あいつは剣も振れない軟弱者だ。たまたま体の前に出した剣にあたっただけだ。


自分は、公にしてないが短い詠唱で火の玉を連発できる。


しかも速度がある。距離を詰めさせない火力。


一対一なら、勝ちは見えている。


◇◆◇◆◇


闘技場に立った瞬間、観客の熱が肌にまとわりついた。


庶民席は酒と脂の匂い。叫び声。賭け札を振る手。


貴族席は静かだが、視線が鋭い。もともとこの大会で認められて王宮で働くつもりだった。


ダグラスは杖を軽く振り、魔力の流れを確かめた。


よし。今日もよく流れている。


すると、アレクサンダーの父親が立ち上がる。


「その男が持っているのは、亡き息子愛用の杖だ。返して欲しい」


これは予想してなかった。楽勝だ。


怒りのざわめき、失望のため息。


視線が一斉にジョナサンへ向く。


ジョナサンは、動揺している。


「これ使いやすいのに。落とし物なのに」



抵抗するも、周囲の目が圧をかける。貴族席の視線。審判の視線。


ジョナサンは杖を差し出した。


ああ、やはり弱い。当たり前だが、動揺してる。頼みの武器を取り上げられたのだ。



「それでは剣を貸していただけますか?」とジョナサンが言った。


観客席がどっと笑う。庶民席から野次が飛ぶ。


「魔法士が剣かよ!」「もう終わりだな!」「儲けさせてくれよ」


「終わりかよ」「武器も持ってないのかよ」


彼は口元をゆがめた。


勝った。とダグラスは思った。


開始と同時の短い詠唱。


火の玉が一つ。続けて二つ。間髪入れず三つ目。


彼の火の玉は速い。直線的で、威力もある。


ジョナサンは剣を構えるが、重そうだ。手元が震えている。


最初の火の玉が迫る。


ジョナサンは剣を横に動かす。


火が逸れる。偶然だ。


二発目。また剣で受ける。押すように。


火の玉が軌道をずらす。


観客がどよめく。


三発目。


今度は足元を狙う。


砂を焼き、煙が上がる。


ジョナサンが一歩下がるが、熱さで跳ね回る。


その瞬間、庶民席から怒号。


「なにやってんだ!」

「押し切れよ!」


ジョナサンに賭けた連中だ。


あいつの偶然に夢を見た愚か者たち。


彼らは焦り、立ち上がり、野次を飛ばし、賭け札を握りしめている。


一方、ダグラスに賭けた連中は笑っている。


「やれ! 焼け!」

「ほら見ろ、剣じゃ無理だ!」「所詮は剣組だ」


歓声が背中を押す。ダグラスはさらに詠唱を短縮する。



火。連射。


火の玉が連続で飛ぶ。


ジョナサンは押し返す。押し返すが、完全には防げない。


ローブの端が焦げる。


「あっちっち」と騒ぐ。


庶民席から悲鳴。


「おい! やばいぞ!」「避けろよ!」「賭けたんだぞ。どうしてくれる」


ダグラスはその声が心地よかった。


恐怖と期待が混ざった音。


そして、貴族席は静かだ。


観察している。値踏みしている。


ダグラスは一瞬、詠唱を止め、距離を詰める。


ここで、見せる。俺は出来る。強い。強さを見せる。自分を高く売る。


近距離。ここで連射。


至近距離での火の玉は回避が難しい。


ジョナサンがふらついている。



よし。とどめだ。


火の玉を三つ同時に構築。


観客が息を呑む。


ジョナサンが後退する。足が砂に取られる。


庶民席から叫び。


「踏ん張れ!」「金返せよ!」


ダグラスに賭けた連中は、すでに勝利を確信している。


「終わりだ!」「燃やせ!」


彼は笑う。


破格の報酬。名声。派手なお目見えだ。


そして、この歓声。


ジョナサンは困っている。明らかに追い詰められている。



ダグラスは最後の詠唱に入る。


短く、鋭く。


火の玉を大きく育てる。


青く揺らめく。


観客席が総立ちになる。


庶民の怒号と歓声が混ざり合う。


ジョナサンに賭けた者たちの顔は青ざめ、ダグラスに賭けた者たちは歯をむき出して笑っている。


勝ちは目前。


彼は確信していた。この試合、貰った。



ダグラスが放った火の玉は大きい。あいつを、ジョナサンを飲み込む大きさだ。


彼はそれを放った。


すると、


ジョナサンがダグラスに笑いかけた。


火の玉がゆっくりと、彼に向かって来た。


そして彼を吞み込んだ。



闘技場の歓声はもう、彼に聞こえなかった。





いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。