3話 聖王女の力と蛙は珍味!?
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
聖王女アスカ(3話)
「さて、山に入る前に注意事項がある。山は足場が悪いところや視界が悪い場所も多く、戦いにくい事も多い。さらに山道は険しい。疲労も早くなる。無理せず少しずつ進んでいくぞ」
「はい」
アスカとエリスは、慣れない山道と連続の戦闘で昼前には、疲労でクタクタになった。
途中に開けた場所があり、そこで一時休止することにした。
「エリス大丈夫?」
「アスカ様こそ……」
「おっ!」
ライデンは、獣のように蛙を捕まえた。
蛙はまるまる太った、食用にもなる蛙だった。
「ラ、ライデン、それどうするの……?」
「もちろん、食べるのさ」
ライデンは、手慣れた手つきで蛙をしめて、捌いた。
「い~」
「う~」
アスカとエリスは、見れなかった。
バチバチバチバチ……火の粉が舞った。
「食うか? ま、食わんだろうな……」
「い、いえ……食べます!」
「ア、アスカ様!?」
「この先、食料が無くなる事もあるかも知れないでしょう? だったらお腹に入るものは入れるべきだと思うわ」
「ほう……」
「確かにその通りですわね……」
「じゃあ、食いやすいところをやろう。見たところ、よく焼けてるようだ、少し焦げ臭いかも知れんが、あたる事は無いだろう」
ライデンは、蛙の部位を切り分け、アスカとエリスに渡した。
「う……」
食べると言ったものの、いざ目の前にしてアスカとエリスは、躊躇した。
「鶏肉に近い食感だと思う。生臭いのは我慢してくれ」
「いくわよ……エリス……」
「はい……」
「せーのっ!」
アスカとエリスは、お互いを見合せ、意を決して同時に口に入れた。
「あら……?」
「意外と美味しいですね」
「鶏肉に近いと言ったろ」
「調味料が欲しいわね」
「食感は悪くないですね」
「ほう……たくましいな」
「ライデン、そこは?」
「内蔵だ。さすがにここはエグみがあるから止めておけ」
3人は仲良く蛙を食べ、再び山道を歩き始めた。
いくつも山を越えたが、山はまだ終わらず、やがて夕方になった。
「夜の山は危ない。今日はここで夜営しよう」
「はい……」
アスカもエリスも、ガクッと膝が折れた。
「そこで休んでて良いぞ」
ライデンは、近くの沢から水を汲んできて、ろ過装置に入れた。
更に小石と小枝を集めてきて、小石を円形に並べ、小枝をその中に置いた。
油紙から火打ち石を取りだし、手品のように火をつけた。
「すごーい……」
「後で、火の付け方を教えよう。少しコツがいるが、すぐに覚えられるさ」
3人は、備蓄食料を食べ、ろ過した水を飲んだ。
「美味しい!」
「はい! 生き返りますね!」
「ライデン、それは?」
「コーヒーだ、苦いが飲んでみるかね?」
アスカとエリスは、コーヒーは、はじめてだった。
「飲んでみようか……?」
「そうですね……」
「そうか、お試しだ。飲めそうならもっと注ごう」
「に、苦い……」
「うーん……私もちょっと……」
「そうか、これにミルクや砂糖を入れて飲むこともある、あいにくだが、砂糖はあるが、ミルクはない。どこかの町でまた飲んでみたらいいさ」
これは、ブラックコーヒーだが、ライデン好みの味で苦味が増していた。
「さ、夜が明けたら出発だ、今日はもう休もう。山の夜は冷える。よく着込むようにな」
「はい」
「アスカ様、子供の頃のようですね」
「そ……うね……」
「……zzZ」
アスカとエリスは、毛布にくるまって、2人寄り添うようにして深い眠りについた。
ライデンは、2人が寝るのを待ってから、火を消し、横になった。
3人が休んでからしばらくすると……
「ライデン……起きてる?」
「ほう、この殺気に気付くとはなかなかだ……」
エリスが、ライデンに声をかけ、隣のアスカをそっと起こした。
ライデンは、すぐに起き上がり、松明で照らすと、敵の正体が明らかになった。
アンデットモンスターのスケルトン戦士だった。
「ちっ……嫌なやつが……」
スケルトン戦士は、全身を粉々にしないと倒せなかった。
更にスケルトン戦士は、剣、盾、兜で武装しており、防具がやっかいだった。
「数が多いな……どうするか……」
「私に任せて! 魔法を詠唱する間、私を守って!」
「分かりました!」
「わ、分かった」
ライデンとエリスがアスカを挟んで、敵の攻撃を防いでいる間、アスカは意識を集中し、全身から淡い水色の光を放った。
「聖光よ! 邪なる力を退けよ!」
次の瞬間、真っ昼間のようにフラッシュし、スケルトン戦士達は消えた。
「こいつは……凄い……」
「さすが、アスカ様……」
「ふぅっ……」
アスカは、上品な笑顔を見せた。
「アスカ様! 凄いです!」
「あなたやライデンが私を守ってくれたおかげよ!」
(確かに凄いお方だ。この力が更に増せば、どんな邪悪にも立ち向かえるようになるかもしれん。何があっても守らねばなるまい。フッ……金のために戦う傭兵の俺が救世主の護衛とはな)
その後3人は、夜明けと共に出発し、とうとう西の山を抜けた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。