やり残した仕事、後始末
ヌアザ編はここ迄と成ります。
次から新章に入るのですが、キリが良いので、ちょっと一休みします。
いつ頃再会するかは決めていませんが、引き続き、来年もお楽しみ頂ければ幸いです。
では、良いお年を♪
「フッ、簡単な事さ。お前さんとジェシーが一緒に成れば良い」
「なっ!冗談が過ぎるぜ旦那!」
「ハハハ、別に冗談では無いさ。二人が一緒に成れば、ジェシーもお前さんも、あの牧場で気兼ね無く暮らして行ける。子供達もお前さんに良く懐いておる。良い父親に成るだろうさ」
「おいおい、その旦那の話には、一つ大きな欠点が有るぜ。ジェシーの気持ちってヤツさ。それを無視する訳にはいか無いぜ」
「フッ、その言い方からすれば、お前さんの気持ちとやらは、満更では無さそうだな」
「なっ!」
「ジェシーを見るに、彼女も満更では無いとは思うが……。うむ、そうだな……お前さんが家を飛び出し、士官学校とやらに入ったのは、その辺りが原因では無いのか?憧れておった女性が、実の兄と一緒に成って、家に居づらく成った……」
「なっ……まったく……。ハァ~、もう止してくれ、旦那。だからと言って、オレとジェシーが一緒に成るなんて話は却下だ!」
「だいいちだ、自慢じゃ無いが旦那も知っての通り、オレの悪名はこの大陸中に轟いてる。ホバートの野郎がバーニーやティナを狙ったのは、その悪名のせいさ。まったく迷惑な話さ。そんなオレが、あの牧場で平穏に暮らして行けると思うか?またどっかのバカが、ジェシーや子供達を狙って来るのがオチさ」
「うむ、ワシもそこ迄は考えて居らなんだが、確かに一理ある」
「まあ、そう言う事さ」
成る程な、この男もこの男なりに熟慮した上での旅支度と言う訳か。
「で、旦那は、これから何処へ向うんだい?」
「フッ、特にあてなど無いさ。お前さんも知っての通り、ワシはこの世に生まれて間も無い。故に、色々と目新しくてな。各地を巡って見て周ろうと思っておる。うむ、なんならお前さんも付いて来るか?お前さんとて、あてなど有るまい」
「ハハハ、ソイツは良い、旦那と一緒なら退屈はし無えで済みそうだぜ♪だけど旦那、先ずは何処を目指すってんだい?こっちはヌアザの南、なんも無えぜ。もし、ヌーグを目指すってんなら、ヌアザから北北西の方向だ。方向が真逆だぜ」
「フッ、ワシが南へ向かう理由は、お前さんが此処でワシを待っておったのと同じ理由だ」
軍服の胸ポケットから、魔力結晶の欠片を一つ取り出し手に握り、刀印を作ってハルファスの魔法陣を素早く描く。
手の中で、ソレがモゾモゾと練成されて行く。
「ジム、手を出せ」
そして、練成したばかりの45ロングコルトを手渡す。
「さて、やり残した仕事を一つ、終わらせに行こうか」
「ああ、良いぜ、旦那」
ゴブリン供の巣を焼き尽くしに。