ヌアザ、凱旋
屋敷を出ると、日もやや高くなって来ておる。
町に戻る頃には、昼を過ぎておる頃だろう。
「そういえば旦那、アイツ等の死体は如何する?さすがに、今からヤツ等の魔力結晶をほじくり出すってのは骨だぜ……」
「うむ、その事なら心配ない。ヤツ等の内2人ほど生かしてある。そ奴らに、見逃す代わりに、敷地内の骸から魔力結晶を集める様に言ってある」
「へー、ソイツは良いぜ♪だが、放っといて良いのかい?オレなら旦那の姿が消えたところで、スグにトンズラするぜ」
「フッ、まあ、その心配は無かろう。威はきかせてある」
「ハハハ、どんな威かは知ら無えが、旦那の威なら随分キモが冷えただろうさ♪」
「それにしても、旦那が悪党を見逃すってのは、珍しい」
「まあ、小悪党の一人や二人見逃したとて、世の中、差して良くも悪くもならんさ。それに……」
「それに?」
「なに、ワシも少しは大人に成ったと言うことさ」
主人を失ったヤツ等の馬を駆り、ヌアザの町を目指す。
遠目にワシが錬成した東西に伸びる土壁が見えて来る。
その壁を迂回しょうとした時、壁の上で手を振る影。
ワシ等を呼んでおる様だ。
その影の元へ馬を向ける。
「ジムさん、ドウマさん、ご無事で良かった。お怪我の方は?」
そう声をかけて来た影の主はケニーだ。
「うむ、心配ない皆無傷だ」
まあ、ジムの傷はワシが魔法で治したからな。
「そうですか、それで……その……御守備の方は……?」
ケニーの視線は、ジムの腕の中で眠るバーニーへと向く。
「ん、ああ、心配無い、バーニーは眠ってるだけさ。心配掛けちまったな」
「そうですか、それはホントに良かった。それじゃあ、向こうから町に入って来てください。壁の一部を崩して入れる様にしています」
そう促され向かうと、確かに土壁の一部が崩され、既に簡易的な門の様な物まで造られている。
中々手早い物だ。
門の前に立つ見張りの指示で門が開き、中に。
ケニーが、既に守備良く行った事を触れ回ったのか、沿道に立った人々がワシ等に手を振る。
まるで、凱旋しておるかの様だ……正直なところ、こう云うのは苦手だ。
そして、町の中央にそびえる教会の尖塔が、大きく見えてくる。