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死ぬかと思ったぜ

ウェパルの権能により、ジムの傷はみるみる治癒していく。

だが、ジムの顔は青白いままだ。

依然、脈も弱い。


当然だ、傷が治ったとて失った血液は戻らん。

さて、如何(どう)したモノか……。

このままでは、そう長くは持たん。


何か良い手は無いモノか……。

部屋の中を見渡す。

部屋の調度品は、この古ぼけ朽ちた牧場に似つかわしくない高級な物ばかりだ。


こんなアジトの一つに、これ程の調度品をそろえるとは、相当稼いでいたらしいな。

まあ、真っ当に稼いでいた分けでは無いだろうが。


飾り棚のガラスの扉のむこうに見えるアレは……。

「ん?これは……フッ、良い物が有った」

ラベルにロマネ・コンティと書かれたボトル。

中の液体も、入っておる。


()れなら、如何(どう)にか出来るやも知れん。

そのボトルを手に取り、棚の角でボトルの口を叩き割る。

悠長にコルク何ぞ抜いてられんからな。


一応、数滴手に垂らし味見する。

「うむ、良いワインだ」


それを持って、横たわるジムの元へ。

ロマネ・コンティのボトルを左手に持ち、右手に結んだ刀印の指先にジムの血を付ける。

そして、その刀印で悪魔ザガンの魔法陣を(えが)き、ジムの胸に押し当てる。

だが、此れだけでは意味がない。

そのワシの右手の甲に、少しづつルビー色の液体を垂らしていく。


悪魔ザガンの権能は、血をワインや油へと錬成するもの。

そして、その逆もまた可能。

こうやって、少しづつ、ジムの心臓に直接血液を錬成していく。


まあ、ワシに取って、普段あまり使い所の無い魔法では有る。

故に、上手く行くかは、こ奴の生命力と運しだいだが、さて……。


「ジム、戻って来い。お前さんはこんな所でクタバル男では無かろう!」


ワシの右手を伝うワインは、刀印の指先からジムの体へと伝わる様に吸収されていく。

焦りは禁物だ。

ゆっくりと錬成し、流し込む。

急いては、返ってジムの心臓が持たん。


徐々に、ジムの顔に赤みがさす。

そして……。

「うっ……うう…………こ、ここは……あの世って……やつか。それとも、旦那が言ってた来世って……ん!?」


「ふっ、何を寝ぼけておる。どうにか、戻って来れたか、ジム」

「だ、旦那……って事はっ!」

ジムは体を起こして辺りを見渡し、銃撃を受けた筈の肩や、腹に手を当てておる。

自らの生死を確認でもしておるのだろう。


「ハァ~……死ぬかと思ったぜ…………」


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