放たれた一矢
「如何ですかミスター・ドウマ、取り合えず話合うと言うのは?アナタも銃を捨てて、出て来て下さいよ。私は見ての通り丸腰です。アナタほどの男が恐れる事は何も無い。何だったら、サーベルは手にしたままでも構いませよ。どうしても気に食わないと言うのでしたら、私の首をお刎ねに成れば良い」
フッ、つまりは、銃を捨てて出て来いと言う事か。
どうも、胡散臭いな。
だが、面白い、受けて立つとしよう。
「軍刀は持っておって構わんのだな?」
「ええ、御随意に」
「うむ、良かろう」
右手の十四年式拳銃を放り投げ、軍刀を右手に持ち替える。
そして、空いた左手に刀印を結んで、素早く魔法陣を一つ描く。
当然だ、ヤツが何ぞ企んでおるのは、あからさまだからな。
そして、ヤツもまた、こんなあからさまな話に乗るワシが、何ぞ企んでおる事は承知の上。
さて、いざ参る。
軍刀を右肩に担ぐ様に構え、ワシも柱の陰から出て、ヤツと対峙する。
「さて、お前さん。ワシ等に付くと言う話だが?」
「ヒヒ♪ミスター・ドウマ、まさか本当に銃を捨てて出て来て下さるとは、思いませんでしたよ。さっきの話、本気にしてる分けではないのでしょ」
「どう言う事かね」
軽くとぼけてみる。
「ヒヒ♪こう言う事ですよ♪」
ヤツが、肩の高さに上げていた右手を素早く伸ばす。
すると、袖口から小さな銃が飛び出し、握られる。
フッ、中々手早いモノだ。
刹那、ワシも素早く左手の魔法陣を発動させる。
そしてヒゲがチリチリと……成るほど、もう一丁隠し持っておったと言う事か。
ズバーン!
ヤツの銃が雷を放つ……が、その放った雷撃は大きく外れ、ワシに足元の随分手前に着弾する。
まあ、地面を伝った電撃で、ちとピリリとはしたがそれだけだ。
ホバートは、自分が何故外したのか、何が起こっておるのか、把握して居らん様だ。
「如何した、ワシを撃たんのか?」
「ば、馬鹿なっ!でしたらもう一発……えっ!何ですかコレは!」
フッ、やっと気づいたか。
「私の手が……手が…………。な、な、何をしたドウマァァーーー!」
ヤツのデリンジャーを握るその右手は爛れ、醜く歪み、手首から先は重力に従う様に垂れ下がって居る。
そして、その手の甲には、オレンジ色に輝く光の矢が突き刺さって見える。
直前にワシが放ったレラジェの矢だ。
さっき、ワシが描いた魔法陣は、レラジェのモノ。
本来なら、矢は狙って放つ必要が有るが、ワシの左手には、未だ一発分魔弾が残って居った。
故に狙うまでも無く、狙った個所に命中する。