【ジム、潜入】 嫌な感触だぜ
折角、旦那が向こうで騒ぎを起こしてくれてるんだ、今の隙に中に。
とは言え、こっちでも、窓を突き破るなんて事をしたら、意味が無え。
このドアから、堂々と入らせて貰うぜ。
で、ドアノブに手を掛けると……ハァ~、鍵が掛かってるぜ。
まあ、当然だわな。
で、どうしたモノか……やっぱ、窓を突き破るか……ん!?
屋敷の前に、朽ちた物置が一つある。
取り合えず、漁らせて貰うと、丁度良い感じの針金だ。
ソイツを持って、再びドアの前に。
で、鍵穴に針金を差し込んで……。
カッチャッ。
フッ、昔はレナードと二人で、兄さんやオーウェンの旦那に良く叱られたが、ガキの頃に悪戯はしておくモンだぜ。
芸は身を助くってね♪
ドアをそっと開け中を覗く。
人の気配は無い。
滑り込む様に、気配を消して中に入る。
左手に、ドアがある。
多分、さっきホバートが居た部屋だ。
取り合えず、今は此処には用は無え。
廊下を進むと、その廊下が十字に重なる。
こういう所で、出合頭って事に成ったら厄介だ。
慎重に、左側の壁を背に左右を覗き込む。
右手には気配は無い。
で、左手には……出会いがしら、髭面の男と目が合う……ヤバい!
刹那、緊張が走り、集中力が増す。
いつもの感覚だ。
こんな時オレは一瞬、周りの時が止まって見える。
それにしても、オレが油断して気配を読み間違えたか、コイツが上手く気配を断ってたか、それとも、元々影の薄い奴か……。
そんな事はどうでも良い、どっちにしろ、しくじった!
旦那の話じゃ、隠身って魔法は、正面に立たれてもマズイって話だった。
男が、呆然と目を瞬かせ、眉間に皺を寄せている。
未だ、旦那の魔法が解けた分けじゃ無えみたいだ。
昨夜、隠身の掛かった旦那の後を付けた時、旦那の声を聴いても、直ぐにハッキリと見える様に成った分けじゃ無い。
段々と、ぼんやりと見えて来た。
コイツもあんな感じか?
だったら!
咄嗟にそう判断し、その髭面の男を引きずり込む様に羽交い絞めにして、腕で首を強く締め上げる。
「ウ、ウゥゥ……」
暴れられても厄介だ、仕方が無え。
そのまま捻じる様に腕に力を入れる。
グキッ!
男の腕が、力なく垂れさがる。
銃で撃ち殺すのは、まあ、慣れたモンだが、絞め殺すってのはな……別に初めてって分けじゃ無えが、まったく、嫌な感触だぜ……。