【ホバート、戦慄】目の前で……だと!
ヘルマスが嫌な含み笑いをしながら話し出す。
「まあ、良いでしょう。手下をお貸ししましょう。お望み通り二千ドルもね。ただし、此方も一つ条件が有ります。手下共は、私の大切な家族です。万が一の事など考えたくも無い。ですが……もし、その万が一の事はあれば、指揮権をゆだねるホバートさん、アナタに香典を出して頂く。そうですな一人に付き200ドル、如何ですかな」
ケッ!
十人死ねば、報酬はゼロに成る。
それ以上死ねば、私の借金に、と言う事ですか。
コイツ等相手に借金を作る気なんて、毛頭無有りませんよ
ですが……。
「まあ、良いでしょう。その条件でこの仕事、お引き受けしましょう」
フッ、いざと成れば、私がコイツ等を皆殺しにするだけの事。
借りた手下共に続いて、外に出る。
こんなつまらない仕事で、命を落とす気は無いし、怪我をする気もさらさら無い。
いざと言う時は、コイツ等を盾にすれば良い。
まあ、私の実入りが減りますが、死んでは元も子も無いですからね。
用心深く辺りを見渡す。
ん!?
アレはいったいどう云う事ですか!
向こうに見える、崩れかけた小屋の梁にも死体が……。
だが、重要なのはそこじゃ無い。
何も無かった筈の小屋の梁に、突如死体が現れた……。
少なくとも、私の目にはそう見えた。
誰かが目の前で吊るし上げた分けじゃ無い。
どんな手品を使ったか知りませんが、あそこで異変が起こったからには、あの近くに何者かが居る筈。
ですが……これは明らかに、誘っている。
と、言う事は罠……。
まあ、良いでしょう。
此処で、出し惜しみしても、意味は無い。
先ずは二百ドル、ベットさせて貰いますよ。
適当な手下の一人に指示を出し、梁に吊られた死体を見に行かせる。
その男は一つ頷くと、ショットガンを手に慎重な足取りで、小屋の前へと歩みを進める。
見た限り、この男の身のこなしは悪く無い。
恐らく、元軍人に違いない。
まあ、今の世の中、食い詰めた元軍人は多く居る。
あのチビは、そんなゴロツキ共を集めて、盗賊から成りあがったと聞く。
あのチビに出来て、私に出来ないなんて事は無い筈……いずれ私も、ヒヒヒ♪
刹那、小屋の近くまで行った男が消える。
それも、唐突に。
私の目の前で……だと!
吊られた死体が突然現れたのとは、まるで逆。
一体、どう云うことだ!
何が起こった!?
そして更に突然、目の前に男が落ちて来る。
それも……喉がら鮮血を吹き出してのた打ち回った挙句、動かなくなる。
ん?
コイツは今さっき目の前で消えた男!
それが何で、空から?
いや、違う!
あの小屋の屋根!
だとすれば、コイツは消えたんじゃ無い。
どうやったかは知りませんが、屋根の上に連れ去られて、そこで喉を……。
ならば敵は!
「や、屋根の上です!」
慌てふためく手下共に指示を出し、銃撃させる。