小鳥?
「まあ良い、ともかく俺も手伝うぜ」
そう、レナードが申し出る。
「うむ、儂等も手を貸そう。良いなクライド」
「まあ、しゃーねーな」
と、ギデオンとクライドも……だが、バーニーの救出には、遠慮なく魔法を駆使したい。
「うむ、申し出は感謝する。だが、スマンがお前さんらは此処に残ってくれ。何しろ、ヤツ等が未だ何ぞ仕掛けて来んとも限らん」
咄嗟の方便だが、その恐れも無いとは言い切れん。
「成るほど、儂等全員で向かえばいざと言う時に困ると言う事か……」
「それに、マーサが助かったとはいえ、オーウェンの旦那も直ぐには、いざと言う時の判断が難しいかも知れ無え。そん時はレナード、お前が指揮を取ってくれ」
「ハァ~、仕方無え……大佐殿の命令に従うとするぜ」
「まったく、だからオレはもう軍人じゃ無えっての」
そして、馬が二頭用意され出立間際、レナードがジムに歩み寄る。
「それと、言い忘れてたが、女帝を仕留めたお前の魔弾。アレを見た奴等には口止めしておいた。あんな戦術級の魔弾まで、軍の倉庫からかっぱらって来てるとは思わなかったぜ……。こんな事、軍に知られたら厄介な事に成るからな」
「フフッ、ああ、そうしてくれると助かる」
どうやら、ワシが放ったバアルの槍は、思惑通りジムの魔弾と言う事に成ったらしい。
「少々、お前さんには悪い事をしたかもしれん」
そう、ジムに呟く。
「ハハ、別に気にしちゃいないさ」
町の東からゲートを抜け暫く進み、町も見えなく成る頃。
「で、旦那そろそろ良いんじゃ無えか?」
フッ、どうやらジムはワシが魔法を使うと感付いておった様だ。
「うむ、まあ、この辺で良かろう」
何も無い荒野のただ中で馬を降る。
そして、比較的平らな地面を探し出す。
「さて、始めようか」
軍刀をベルトから外し、そのまま鞘の先で魔法陣を三つ描く。
どれも同じ図形、悪魔デカラビアの魔法陣だ。
その描き上げた魔法陣の一つに手を乗せ、魔力を注ぐ。
魔法陣がオレンジ色に輝き出す。
この魔法陣は、ある種の召喚陣。
と言っても、悪魔そのものを召喚するわけでは無い。
ケットシーの魔力の制御に慣れてきたとは言え、今は未だ悪魔を召喚する迄には練度が足らん。
故に、ワシが召喚するのは、その眷属。
「出でて我が目と成れ、デカラビアの小鳥!」
魔法陣の中で、魔力の粒子が集まり形を成す。
そして、一羽のスズメに…………しかし……。
「ああ……旦那、小鳥ってのはコイツの事かい?」
「はぁ~……言うな……」
魔法陣の中にふてぶてしく居座るそのスズメは、姿形こそまごう事無きスズメ。
だが……ワシよりデカい……。