危うい命
「それと、ドウマ、ジム……」
只でも険しいギデオンの顔が、更に神妙な顔に成る。
「どうした?」
「オーウェン殿の奥方が撃たれた」
「なっ!?マーサが撃たれたって!」
ジムが声を上げる。
「教会で立て籠もっておった皆に、炎龍殿が女帝を斃した報が流れた直後、そこを護っておった筈のヤツが、もう一人の男と突如銃を抜いて、双子を攫おうとしたらしい。そしてその時、居合わせた奥方殿が庇おうとして、あヤツに撃たれたと」
「で、そのマーサの様態は?」
ともかく、命があるならば如何にか出来る。
「うむ……判らん。儂等はその報を受けて、慌ててヤツ等を追って馬を飛ばしたものでな」
「成らば、スマンが馬を借りたい。もし、未だマーサの命が有るなら、助けられるやもしれん」
「なんと、ドウマ殿それは本当か?」
「まあ、詳しくは話せんが、そう言う魔道具を持っておる」
と、言う事にして置く。
「うむ、承知した、儂の馬を使ってくれて構わん」
「重ねてスマンが、ジムとティナも先に連れて行きたいのだが……」
「そう言うことであれば、クライド、お前の馬を炎龍殿に」
「えーー、爺ちゃん……」
クライドも、不平を言いつつもギデオンに睨まれ、しぶしぶ馬をシムとティナに譲る。
「恩に着る。それと、もう一つ。そこに伸びておるホバートの仲間の男を連行して来てくれ。後で尋問したい」
「うむ、承知した」
「ジム、急ぐぞ」
「分った、旦那」
少々遠回りには成るが、町の東側へと向かう。
ワシの錬成した壁が、今となっては邪魔だ。
「ジム、分って居ると思うが、魔法でマーサを治癒する」
「ああ、旦那がマーサを治療している間、誰も近付け無きゃ良いんだな。でも、本当に如何にか成るのかい、旦那?」
「うむ、実は話しておらんかったが、オーガとやり合った時、レナードは首をへし折っておった」
「はぁ!?首って……」
「少々、危うい所であったが、まあ、命さえあればどうにでも成ると言う事だ。それと、分っていると思うが、レナードには言わんでくれよ」
「ハハ、分ったぜ」
教会の前で馬を降り、その中へ。
ジムも、眠る様に気を失っているティナを抱いて、後に続く。
教会の中には、泣き崩れる女性と、彼女を慰める住民たち。
その中にジムが駆け寄って行く
「ジム!えっ、ティナ!」
泣き崩れていたジェシーが我に返り、ティナを抱きしめる。
「ティナは意識を失っているだけだ。だが、スマン……バーニーは連れていかれた」
ジムが、ジェシーに謝る。
「ジェシー、攫ったと言う事は、直ぐに命を取る気は無いと言うことだ。必ず、ワシとジムが助け出す」
そして、エドの敵もな。