大技を放つしかあるまい……
ワシとジムが左右に分かれる様に、別の岩陰に飛び込む。
その刹那、ズババババ！と無数の何かが地面に突き刺さる。
いや、何かでは無い石だ。
岩陰から顔を出し、女帝の手元を見る。
何かを握りつぶす仕草、そして、その腕を力強く振り下ろす。
咄嗟に、頭を岩陰に隠す。
ズババババ！
再び、無数の石が、地面に突き刺さる。
当然、ワシらを取り囲んでおったゴブリン共はその巻き添えを喰らって、散弾を浴びた様に体中から血を流し倒れる。
成るほど、ヤツのあの握りつぶす仕草は、自身が纏う岩の鎧を握りつぶしておるのだ。
そして、それを石礫として、手当たり次第に投げ付けて来ている。
さっき、ワシが始末した女王同様、我が子だろうゴブリン共など意に介さずにな。
「どうする、旦那！もう、旦那から貰った弾が無え！」
さて、如何したモノか……。
一応、この間の事もある。
念の為、予備の魔力結晶は幾つか持ってきてはおる。
これで、ヤツの石礫を凌ぎながら錬成する事は可能だ。
弾を、補給して、もう一度仕掛けるか…………いや、同じ事だ。
弾をいくら錬成したとて、撃てる銃が限られておる。
ワシの十四年式八発、実際は魔弾の権能が有効な六発、それと、ジムのコルトの六発。
それで、仕留め切れんなら、再度、装弾と魔弾の魔法陣を描く必要が有る。
その間に、ヤツの鎧は再生する……さて、厄介な事だ。
ギェェーー！
女帝が投げつける石礫の弾幕の中を、血だるまに成りながらゴブリン共が襲って来る。
咄嗟に、十四年式をホルスターに仕舞い、軍刀で切り伏す。
何とも、非力なゴブリンと言えど、こう命知らずな戦い方を絶え間なくされると、これはこれで驚異だな。
ターン！
ジムも、自身のコルトを仕舞い、担いでいたスペンサーで応戦して居る。
だが、いくらジムとて、いつまでもその様な戦い方を続けると云う分けにも行くまい。
その内、弾薬も尽きる。
それに、結局のところ、あの女帝を始末せんことには、この戦は終わらん。
やはり、大技を放つしかあるまい……。
女帝が動き出す。
岩陰に隠れるワシらに業を煮やしたのか、右手に回り込んで、石礫を投げつけて来た。
咄嗟に、岩陰から飛び出し、回避。
ジムは何を思ったのか、スペンサーを女帝の頭に向ける。
そして、何かを感じ取った女帝が右手で顔を覆う。
ターン！
キシァァァーーー！
ジムの放った銃弾は、岩に覆われた右手の指の間を抜け、女帝の右目を射抜く。
「なんと、あ奴、当ておった！」
