今一歩、及ばんかったか……
カチッ。
ジムのコルトのローディングゲート閉じられる音が、小さく聞こえる。
コルトの装弾を終えたと云うことだ。
「ジム、スマンがワシも、ちと準備を整えたい。全部とは言わん、何匹かゴブリンを頼む」
「ああ良いぜ、旦那」
ジムはそう返事すると、素早く銃を左手でもう一挺抜き、ゴブリンを射抜く。
ワシも、ゴブリンを二匹切り捨てると、すかさずその軍刀を口に咥え、十四年式の弾倉を再度差し替える。
大の刻印の弾倉は、これが最後だ。
刹那、女帝が投げつけて来る岩が頭上に迫る。
それを、身を捻る様に躱しながら、左手に刀印を結び、ザミエルの魔法陣を素早く描いて胸に当て魔弾の権能を発動させる。
ワシの準備も整った。
再び、軍刀を左手で握り、ゴブリンを切り捨てながら、ジムと背中合わせに立つ。
「スマン、ちと待たせた」
「ハハ、大して待っちゃい無えぜ。で、どうすれば良い?」
「なに、単純な話だ。一点に集中砲火を加える」
「成るほど、女帝の鎧の再生が間に合わ無えほど大砲ぶちこみゃ、一発ぐらいその中身に届くかもって戦法か。良いぜ、旦那」
ジムのファニングショットは、一瞬で全弾撃ち尽くせる。
だが、ワシの十四年式ではそうは行かん。
「ジム、先ずはワシが八発撃ち尽くす。それに続いて、ワシが撃ちこんだ個所に全弾叩き込め!」
「ああ、いいぜ!」
邪魔されん様に、近くのゴブリンの頭を三つ跳ね飛ばし、女帝の胸元に照星を合わせて、引き金を引く。
ズドン、ズドン、ズドン、ズドン、ズドン、ズドン、ズドン、ズドン!
全弾撃ち尽くす。
放った弾丸は、僅かにズレた二発以外、寸分たがわず一点に着弾する。
ワシが撃ち終わるとほぼ同時に、ジムのコルトが轟音を轟かせ火を噴く。
ズドドドドドドーーン!
女帝の胸元を覆う岩の鎧が砕け散る。
キ、キキシェェェーーーーー!
女帝の絶叫と共に、血しぶきが飛び散り、ヤツの纏う岩の鎧が紅に染まる。
「殺ったか!?」
ジムが、振り絞る様にそう呟く。
女帝の絶叫が、怒りの雄叫びへと変わる。
ギ、ギ、ギギェェェーーーー!
血走った目に有らん限りの憎悪を込めて、睨み付けてくる。
胸元から噴き出しておった鮮血も、徐々に収まり、岩の鎧が盛り上がる様に再生される。
「くっ!今一歩、及ばんかったか……」
恐らく、もう一発有れば、ヤツの心臓を貫いておったろう。
奇声を上げ、女帝が何かを投げつける様に腕を振り下ろす。
嫌な予感に、咄嗟にジムに叫ぶ。
「岩陰に飛び込め!!」