女帝の親征
オーウェンが懸念しておったが、女帝とやら自らが親征して来たか。
ジムに渡した45ロングコルトは、ワシの大の刻印の倍以上の威力がある。
実際、ジムはワシが少々手こずった女王を難なく始末して居る。
その弾丸を以てしても、ジム程の男が手をこまねくか……。
町の方に目を移す。
オーウェン達が炎を抜けて来るゴブリン共に、止む事無く銃弾を浴びせかけている。
ワシの錬成したあの壁のお陰で、どうにか持ち堪えておる様だ。
それに、向こうに見える女帝意外、巨大な影は見当たらん。
「ゴブリン共は、町の皆に任せておいても問題なかろう。ならば、ワシは!」
女帝目掛け走り出す。
その女帝の醜悪な姿と、ジムの後ろ姿も徐々にハッキリしてくる。
ジムの周りには、群がるゴブリン共。
女帝の取り巻きか。
ズドーン!
ターン!
ほう、何とも相変わらず器用な事をする。
右手のコルトで女帝を撃ち、ほぼ同時に左手に持ったレバーアクションのカービン銃で、襲い来るゴブリンの眉間を撃ち抜く。
そして、すかさず片手でカービンをクルリと回しレバーをコッキング、別のゴブリンを狙う。
ターン!
ん!?
女帝が女王と同じく、岩を大量に投げつけて来る。
その岩の一つがジムの頭上に。
咄嗟に、十四年式を構え、碌に狙いも付けず引き金を引く。
ズドン、ズドン!
ジムの頭上でその岩が砕け散る。
運良く魔弾の効力が二発分残っておったのだ。
今度はジムが、持っておったカービンを投げ捨て、左手で腰の銃を抜きざま、ワシの方に向けてぶっ放す。
バババン!
グゲッ!と、カエルが潰れる様な断末魔の叫びが背後に三つ聞こえる。
チラリと背後に目をやると、三匹のゴブリンが絶命するところであった。
相変わらず、見事なファニングショットだ。
しかも、撃鉄を叩いた右手にコルトを握ったままでだ……一体、どうやって居るのだ?
そのまま、ゴブリン共を切りつけながらジムの元へ駆け寄る。
「珍しく、手こずっておるな」
「面目無え、旦那。助かったぜ」
「フッ、それにしても、何だその恰好は。まるでハリネズミでは無いか」
ジムは、自身のコルト以外に、カービン二挺、それと、銃をホルスターに差したガンベルトを二本、肩にタスキの様に掛けている。
他にも、自身のガンベルトと腹の間に何挺か銃を差しておる様だ。
「ハハ、オレは旦那みたいにサーベルは扱え無いんでね。弾切れに成る訳にはいかないのさ」
そう、言いながら右手に持ったコルトをホルスターに戻し、タスキ掛けにしているガンベルトのホルスターから別の銃を抜き、ゴブリン共にぶっ放す。