撃ち抜く、一点
女王が投げつける岩やらゴブリンやらを避けつつ、軍刀で切りつけながら、左手に刀印を結んで魔法陣を描き、それを胸に押し付ける。
そして、すかさず、軍刀を左手に持ち替え、咥えていた十四年式を右手に取り、一瞬で狙いを定め引き金を引く。
ズドン、ズドン!
キキシャァーーーー!
女王が、苦痛にかなぎり声を上げる。
「チッ、一発外したか!」
まだだ、未だ足りん!
だが、十四年式の弾倉は空。
襲い来るゴブリン五匹の首を切り飛ばすと、素早く軍刀を地面に突き立て、予備の弾倉を取り出して差し替えコッキング。
その隙を突いて襲い来るゴブリンを躱しざま、延髄に蹴りを叩き込む。
地に突き立てた軍刀を再び左手で引き抜き、更に三匹切り殺す。
一瞬、ワシに群がるゴブリンが途切れる。
「今だ!」
十四年式を構え狙いを定める。
もう外す事は無い。
ワシがさっき描いたのはザミエルの魔法陣。
振るう権能は、魔弾の権能。
二発撃って、既に一発外しておる。
この後の五発は確実に、ワシの狙い通りに命中する。
ワシが狙う一点とは、最初に弾丸を撃ち込んだ、あの胸の傷。
ズドン、ズドン、ズドン!
キ、キキシャァァァァーーーーー!
立て続けに放った三発目の弾丸が、女王の背中に抜け、噴水の様な血しぶきが上がる。
そして、女王は断末魔の奇声を上げ、蜘蛛の様な足を折りたたむ様にして動かなくなる。
「ふぅー、先ずは女王を一体。で、ジムの方は?」
女王が斃されても尚、襲い来るゴブリン共を軍刀で切り殺しながら、ジムの向かった東へと向かう。
ズドーン!
オーウェン達が応戦する銃声に交じって、遠くで聞き覚えのある銃声。
見えて来た。
前方に見えて来る女王の巨体が、炎に照らされている。
しかも、力無く蹲る様に……どうやらジムが始末したらしい。
で、そのジムは?
ズドーン!
銃声が聞こえた南東に目を向ける。
ダスターコートを翻し走るあの影はジム。
奴は女王を始末しても尚、大砲をぶっ放しながら、町から遠ざかる様に疾走する。
当然、ジムが逃げる事など無い。
何者か、ジムが手をこまねくほどの強敵を、町から遠ざけ様と、引きつけておるのだ。
それ程の敵……ジムが放った射線の先に見えるあの黒い影。
炎の罠から距離がある。
暗く、良くは見えんが、あのシルエットは女王にも見える……。
「が、デカいな」
恐らく、女王より二回りはデカい。
「と、すれば、成るほどアレが女帝」