表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

弾き飛ばされた夫婦 タケシside

 オレの名前は、木之本(キノモト) (タケシ)

 妻と二人で夢の喫茶店経営を始めた男だ!


 …確かに、そうだったんだけれど…。

 あの忌ま忌ましい流行病(はやりやまい)で、店も生活も、夢も希望も、一切合切奪われた!


 妻とは小学生時代からの腐れ縁。

 でも、高校に入学する頃には『ああ、この人なんだ…』という感情が芽生えていた。

 彼女は親切で気立ても良く、細かいことまで行き届く、よく言えば『気遣い上手』、悪く言えば『仕切り屋さん』だった。

 オレの大雑把な性格をカバーしてくれる頼もしい存在、それが彼女だった。


 オレの両親は、いつも不仲だった。

 物心ついた時には、恒常化した夫婦喧嘩の巻き添えを食らってばかり…。

 だから、そんな家に居たくなかったので、いつも外に逃げていた。

 深夜まで徘徊する幼児…直ぐに警察に捕まり自宅へ。

 しかし、オレが警察官さんと帰宅すると、オレの育児放棄を巡って夫婦喧嘩は更に酷くなり、止めに入った警察官さんまでケガをする事に…。

 結局、両親は公務執行妨害の罪で現行犯逮捕。

 オレは養護施設に送致され、夫婦は離婚…家庭は崩壊した。


 人間不信になり、施設の片隅で壁とにらめっこをしていたオレを助けてくれたのがカスミ…今の妻だ。

 彼女も中学生の母親が私生児として産み落とし、そのままトイレで遺棄される寸前の所を保護された…らしい。

 当然、親がそんな状態では子供を育てられる訳もなく、中学生の両親、つまり彼女の祖父母は、世間の体面を保つ為に、彼女の受け入れを公然と拒否!

 中学生の娘を勘当した挙げ句、孫共々、養護施設に押し付けたらしい…。

 その後、養護施設内で母親と一緒に暮らしていた彼女ではあったが、オレが入所する頃には、母親は施設を卒業し何処かへ行ってしまった。


 そんな寂しさとオレに対する同情が重なったのか、彼女はすっかりオレに懐いてしまった。

 何処に行くにしても、何をするにしても、オレ達はいつも『ワンセット』だった。

 だから、オレも彼女を受け入れ、一緒に生きる道を決めてしまった。


 そして、高校に入学する頃には、オレ達の関係が崩れそうになる。

 まぁ、お互い人気は有るし、交友関係も広がり、惚れた腫れたではしゃぐような歳になっていたんだ。

 その頃、彼女が別の男から告白された。


 返事に困った彼女はオレに相談してきた。

「タケちゃん、どうしよう…。」

「どうするって、オレが決める事じゃ…。」

「『断れっ!』って言ってくれないの?」

 涙を浮かべ、上目遣いでオレを見つめて来るカスミ。

 結局、ここで彼女をハグしてキスして…告白して…本格的に交際する事になった。


 もっとも、周りから見れば『何を今更…』だったらしく、ヤキモキしていた彼女の友人達が仕掛けた『嘘告白』だったらしい。

 みんなに祝福されながら、高校と養護施設を卒業し、同棲生活をしながらオレ達の目標『喫茶店開業』を目指して頑張ってきた。

 まぁ、努力の成果もあり、喫茶店の開業に漕ぎ着けたけれど…まさか、融資を受ける条件にカスミとの結婚が含まれているとは思わなかった。


「なんかゴメン。

 こんな形で結婚することになって…。」

「ん?

 気にしてないよ♪

 むしろ、何を今更って感じ?」

 頭を下げたオレを、優しく抱きしめてくれる彼女…。

 そしてオレ達は、初夜を迎えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ