旅は道連れ
- タケシside
ここは移動中の車内。
後席に鎮座しているのは、未知のワン子『タツロー』と彼の後見人?である『ミカ』ちゃん。
「見て見てぇ。
タツローの動画、とんでもない勢いでバズってるぅ♪」
信号停車のタイミングで、妻が楽しそうにオレが投稿した動画の反応を見せてくる。
バズりもバズり、大バズりである。
『なにコレ可愛い!』にはじまり、『高性能CGか?』『生成アニメーション?』とコメントも盛大に賑わっている。
そんなコメントの数々を楽しそうに眺めている妻…こんなに楽しそうにしている妻を見るのは久しぶりです。
「そうだな。」
信号機が青に変わったので、会話は切り上げになってしまったが、妻は相当ご機嫌な様子で…鼻歌まで聞こえてくる。
ルームミラー越しに後席を覗けば、仲睦まじく寄り添って座る二匹のワン子。
フワフワ毛並みのミカは目を閉じ、短毛ワンパクのタツローはじっと正面を見ている。
この旅の行き着く先は、きっと茨の道が待った無しだと思っている。
でも、この旅を続ける決断を下したのは、タツローと一緒なら楽しそうな事が起こりそうな予感があるからだ。
何か根拠があるわけではない。
しかし、投稿した動画一本でこれだけの話題をかっ攫うワン子…これ以上の根拠はいらないだろう。
草原への道程は、死へと続く絶望と悲壮感に満ちたモノだった。
今こうして、草原を去る道程は、ワクワク感と楽観的な希望に満ち溢れている。
草原を抜け、幹線道路に入り、目指すは『タツローの自宅』と思われる住所。
時折、妻の顔を確認するが、その表情には不安や心配の影はなく、本当に朗らかな面持ちで座っている。
さあ、行こう!
前途多難は当たり前!
オレ達は、死から生を掴み取ったのだから!
- カスミside
不思議なワン子達…。
タツローは相当に変わり者ですが、ミカだって変わっています。
あの月夜で命運が尽きていた私は、翌朝を迎えていました。
(死ねなかった…。)
その嫌悪とやるせない思いを胸に佇んでいた私を気遣うように、ミカは私に身を任せてきました。
何かを語りかけるわけでもなく、ただ寄り添ってくれる…。
それだけで、悲鳴を上げていた心に、涼やかな風が吹き抜けていきます…残ったのは、春の陽だまりのようなポカポカとした落ち着いた温もり。
死ぬことばかり考えていた私の心は、すっかり解きほぐされ…死の恐怖に涙を流すまでになってしまいます。
「安心して…
もう大丈夫。」
そう語りかけるように、私に寄り添ってくれるミカ。
彼女を抱きしめ、子供のように泣くわたし…。
でも、寂しかったり、辛かったりという感情はありません。
ただ、癒やされたい!
その一心で彼女を抱いて泣きました。
そんな彼女が、私達と旅立つことを拒みました。
…冗談じゃありません!
私の心の拠り所!
そんな大切な存在を手放すわけにはいきません!
タツロー君も、彼女を必要としているようだから…ここは私の腕の見せ所ね♪
しっかり彼女を抱きしめ、優しく言葉をかける…でも、来て欲しいという気持ちをしっかり込める!
無事彼女は私達と旅立つことに同意してくれました。
前途多難はいつもの事!
でも、今回は心強い味方も居てくれる!
さぁ、難問共かかってらっしゃい!




