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草原よサヨナラ

「どうしてだい?」

 わたしは、ミカさんに寄り添い、彼女に問いかけます。


「だって、私は呼ばれてない…。」

 不貞腐れ気味に答えて、地べたに伏せる彼女。

「そんな事は…無いと思いますよ?」

 わたしがおどけてみせますが、

「そんな事あるもん!」

 ミカさんはさらに不貞腐れ、ソッポまで向け始めてしまいます。


 いったい何が不満なのでしょうか?

 あるいは、わたしが夫婦と会話を重ねていたことに不満を感じていたのでしょうか?

 いずれにしても、ご機嫌斜めの彼女は、まだまだ動く気配がありません。

 折角、ご縁が有って、短い期間とは言え寝食を共にしてきたパートナーさん…此処で別れたら絶対に後悔します、主(・)に(・)わ(・)た(・)し(・)が(・)!

 どうにか説得できないかと、彼女の前でオタオタしているわたしの様子を見かねたのでしょうか、カスミさんがわたしを押し退け、ミカさんの前にかがみ込み、話しかけてきました。

「ねぇ、ミカ…あなたも、一緒に来なさい。」


 しばらく見つめ合っている一人と一匹。

 渋々顔のミカさんがゆっくりと立ち上がれば、そんな彼女を優しくハグするカスミさん。

 あるいは、「人間に拾われても、また捨てられるのでは?』という危惧がミカさんには、あったのかもしれません。

 カスミさんに抱き寄せられ、困ったような顔をしているミカさんを眺めながら、わたしはある事を思い出します。


(シマッタ!ご飯を取ってこないと!)

「ワンッ!」

 一声鳴いて、ドッグフードを取りにわたしは走り出します…よりによって二足歩行で!

 夫婦は、わたしの後ろ姿に爆笑しているようです。

 ひょっとすると、再びスマホで動画を撮っているかも知れませんし、ミカさんは呆れ顔になっている事でしょう。

 とりあえず、わたしは走るしかないのです。

 目指すは、林の島、彼女の住まい…。

 なのですが、思ったよりも長距離を走らなければならないようです。


 前足を交互に振り、短いスライドで草原を疾駆するブルテリアの雄姿…。

 はてさて、出来上がった動画は、どこまでバズる事が出来るのでしょうか?

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