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まるくんの夢物語  作者: まるくん
序章 2050年
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私鉄の駅前を歩いていると、まるくん、犬の凜、スズメのシズカは第三次世界大戦に遭遇した。それを確認するとまるくんたちは時間を戻して2025年の日本に帰った。


 大きな私鉄の駅前で、私は犬のバーニーズマウンテンを連れて歩いていた。

 とつぜん爆発音がして、私と犬は爆風で飛ばされ、肩に止まっていたスズメが驚いて舞い上がった。3階までの吹き抜けの窓ガラスが割れた。そのガラスが倒れた私に降り注いで来た。向かいのビルが爆発で崩れて燃え上がっていた。

 何が起こったのか自覚できなかった。向かいのビルの様子から、何かが爆発したように見えた。それは間違いだった。空からミサイルが飛んできて、その隣のビルに落ちて爆発したのだった。ミサイルは次々飛んできて、辺りのビルに落ちて爆発した。

 私鉄の駅も直撃弾を受けて燃え上がっていた。多くの人々が倒れていた。

 私は、犬を連れてガラスの割れたビルに飛び込んだ。スズメが私を追ってきた。エントランスの奥まで入って、振り返ってみた。遠くのあちこちのビルが崩れて燃えていた。

 吹き抜けの割れ残ったガラスに炎が映り込んで、赤くなっていた。街路樹の緑や空の青さも映り込んでいて、ステンドグラスのようになっていた。赤、緑、青の各色がそれぞれ自分を主張して、全体の美しさを醸し出していた。それがゆらゆらと揺れていた。

「まるくん、びっくりしたね」

 犬の凜は、外の爆発音に向かって吠えた。

「とうとう始まったのね」

 スズメのシズカが残念そうに言った。

「第三次世界大戦だね。これはC国か、NK国からのミサイルなんだろうな」

 私は、2050年の人間ではなかった。時間を操れるシズカの力を借りて、2025年の日本から時空を超えてやって来た。いま70歳だから、2050年にはもう生きていないかもしれなかった。

 生きてないから、私には無関係といえば無関係なのだが、ある事がきっかけで見過ごすことが出来なくなっていた。

 シズカに時間を操ってもらって、私は世界が滅亡する場面を確認に来ていた。第三次世界大戦が実際に起こるとはこの目で見ない限り信じられなかった。

 世界の警察だったアメリカが、自分たちの事だけを考え始めて、R国、C国などが覇権争いに走り始めていた。アメリカは世界秩序のために、自国の軍隊や若者たちの命を犠牲にするのを嫌がっていた。世界の警察を全うしようと思うと、莫大な資金と犠牲が伴ったのだ。

 かと言って、平和ボケしている日本がアメリカの替わりを務める事は出来なかった。

 救急車が燃え盛るビル群の中を走り回り、あちこちで人々の悲鳴が飛び交っていた。救急隊員がその人たちの救助に当たっていた。

 ミサイル攻撃が止むと、私たちはビルから外に出た。

 パトカーが走って来て、警察官が人を誘導したり、怪我人を介助したりしていた。辺りは焦げ臭い匂いが充満していた。

 街角の大型スクリーンでは、ミサイル攻撃のニュースが流れていた。ミサイルはC国から発射されたらしい。台湾への侵攻が同時に行われたと報道していた。

「シズカ、もう充分だ。2025年に帰ろう」

 私たちは、人の目を逃れてビルの路地に潜り込み、時間のジャンプの態勢に入った。戻ろうとしたとき、耳のいい凜が、

「子供の泣き声がするよ」

 と言った。

 耳を澄ますと、かすかに子供の泣き声がしてきた。

「凛! 子供の居場所が分かるか!」

「任せて!」

 凜は、一目散に駆けだした。

 路地からさらに隙間に入ると、コンクリートが崩れていて、その傍に女の子が泣いていた。近づくと母親らしき女性が横たわっていた。

「ママ!」

 女の子は、泣きながら呼び続けていた。

 母親の胸の辺りにコンクリートの大きな塊が覆いかぶさっていた。

「しっかりしろ!」

 母親の頬を叩いて、私は叫んだ。母親は目を開けて私を見た。

「しっかりしろ!」

 母親はなにか言いたそうにしていたが、口が動いただけで言葉にならなかった。

「しっかりして!」

 スズメのシズカが母親の頬をつついて叫んだ。しかし、母親にはその声はチュンチュンとしか聞こえてないはずだった。

 私は、コンクリートの塊を動かそうとした。びくともしなかった。

「まるくん、誰か呼んで来る」

 凜が走り出そうとした。

「待て! 凛!」

「どうして! こんなコンクリート、まるくんでは動かせない」

「分かってる! シズカ! 時間を動かせ」

「時間を? あっ、分かった」

 シズカは目を閉じて、パワーを送った。時間が戻り、ミサイル攻撃を受ける前の街に戻った。私は、軽い眩暈がした。意識が戻ると、さっきまで崩れていたビルが嘘のように綺麗な街並みに戻っていた。

「まるくん! 10分だけだよ」

「分かった。10分だけ戻ったんだな」

 目の前に、母親と女の子がビルの路地を歩いていた。私は、女の子を抱きかかえた。

「なにするんですか!」

 母親が私に飛びかかろうとした。すぐさま凜が母親のスカートの裾を引っ張った。私が女の子を抱いて走り出すと、母親も凜に引っ張られて追いかけて来た。

 そのとき突然、ミサイル攻撃が始まり、ビルが崩れ出した。私は息切れしながら、ひたすら走った。どこが安全か分からなかったが、さっき非難したビルのエントランスなら、崩壊は免れているはずだと思って、そこへ入り込んだ。

「お母さん、ここならひとまず安全です」

「ありがとうございました。てっきり誘拐かと思いました。お陰で助かりました」

「ここで攻撃が落ち着くまで待機していたほうが良さそうです」

「攻撃? これはいったい何が起こったのですか?」

「たぶん戦争です。第三次世界大戦が起こったかもしれません。いまミサイルがあちこちに飛んできています」

「戦争だって?」

 私と母親の会話を聞いていた男性が声を張り上げました。

「はっきりとした事は私には分かりません。戦争の可能性があります」

 エントランスで避難していた人たちが騒ぎ出した。

「では、お母さん。もう大丈夫ですね。私は用事があるので失礼します」

「あの、お名前を教えてください」

「名前は勘弁してください」

 私は、これ以上、ここに居るとややこしくなって困ると思って、凜とシズカを連れて早々に出て行き、人目につかないところで2025年に戻った。


 これを読んでいるあなたは、いま2050年にいます。本編に入る前に、ややこしくなるので序章の事は忘れてください。主人公のまるくんは、シズカや犬の凜とはまだ知り合っていません。では2025年に戻ります。これからが物語の始まりです。

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