第二十六話 天宮寺さんの涙
遅くなって申し訳ない。
「やあ君達。その様子だと、五十万円には届かなかったようだね」
「‥‥一つ、質問してもいいですか?」
「いいだろう」
「店の前に来たクレープの販売車、まさかあなたが仕向けたとかないですよね?」
「そうだ。私が仕向けた」
「「「「「‥‥‥!」」」」」
天宮寺さん以外のその場にいた全員が戦慄した。
「なんで‥‥こんなことしたんですか‥‥!」
天音が怒りの籠った声で天宮寺さんに問いかける。
「いやぁ、最初は五十万円なんかいかないと思っていたんだが、途中から不味いことになったからな、少し、手を出させてもらったよ」
「だからって!あなたの勝手でこんなことしていいはずが‥‥!」
「いいんだよ」
「えっ‥‥?」
天宮寺さんが食い気味に答える。
「大人はね、喰うか喰われるか、死ぬか生きるかの世界で生きているんだ。君達のような学生が呑気に生活している間、私達はいつも苦労しているんだよ」
「そ、そんな‥‥」
「お父様、少しよろしいでしょうか?」
静まっていく空気の中、会長だけが声を出した。
「なんだ?」
「こちらの席に座って、少しの間待っていていただけますか?」
「私は何も食べないぞ」
「少しだけでいいんです」
「はあ‥‥まあいいだろう」
「ありがとうございます」
天宮寺さんが渋々席につく。
「如月さん、少しいいですか?」
「は、はい」
会長と天音がコソコソ話をすると、少し経ったところで二人して厨房に入って行った。
◇
五分程経ち、天音と会長が戻って来た。
「これはなんだ?」
「この方、如月さんが作ったチェリーパイです。この三日間の売り上げも大半はこの商品が占めています。少しだけでいいので、食べていただければ幸いです」
天宮寺さんが『はぁ‥』と溜息をつきながら、チェリーパイをフォークで刺し、少しだけ口に入れた。
「‥‥うまい。美味いぞ!これは!」
「そうでしょう」
天宮寺さんが涙を零し始めた。
「‥‥うぐっ。懐かしい‥‥妻の作っていたチェリーパイにそっくりだ」
天宮寺さんはそのままペロリとチェリーパイを平らげた。
「ここまで感動させられたのは初めてだ。この感動に免じて、店の取り壊しをやめるとしよう!」
「本当ですか‥‥!?」
「男に二言はない」
「「「「よ、よっしゃー!!」」」」
「天音の努力があの人を感動させたんだ!ありがとうな!」
「ううん、みんなのおかげだよ!会長もありがとうございました!」
「別に、私は当然のことをしたまでですよ」
「まあ、生徒会には入ってもらいますが」
「‥‥‥へ?」
一難去ってまた一難。
ここから、俺達の生徒会活動が始まるのだった。
この小説がいいと思ったら、ブクマと評価をお願いします。
また、批判でも構いませんのでコメントも是非お願いします。
ページ下部↓の【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】から評価をお願いします。
今後もこの小説をご覧になっていただけると幸いです。




