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死にたがりの物語  作者: 椿姫
第一章   はじまりの落下
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1ページ目   出会いと、ねじれ




ここは俺こと長谷部十架が通う市立芳賀高校

そこそこレベルの高い、特に取り柄もないような高校で、信じられないことが起きている

これが夢ならどんなにいいか、というか夢であってくれ、と切に願う



その信じられないこととは



それから女の子が降ってきた。




いやいやいや、そんなにロマンチックなことじゃねぇ、何を隠そう俺がいるのは校舎の近くの道。つまり・・・・




この女の子は飛び降りたのだ(・・・・・・・)、屋上から


つまり飛び降り自殺だ。めったに見れるもんじゃない


って違う違う、問題はそこじゃなくて落下地点が俺のいるところっていううわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!



俺が一瞬の現実逃避を終えると同時に、空から降ってきた女の子は俺を下敷き、及びクッション代わりにして地面に到達した


「いってぇ・・・・」

体のところどころが、というかほぼ全体が悲鳴をあげている。それに右手の感覚がおかしい、どうやら折れたみたいだ。しかしそんなのが気にならなくなるくらいの衝撃が、俺を襲っていた


その元凶。俺が大けがをするもととなった少女。その顔は、非常に整っていた

まるで人形のような一部の隙もない顔立ちに桜色の小さな唇が唯一その少女を生きているのだと証明する。体は小さく、ミントの様な香りがほのかに立ち上る。そんな明らかに恵まれているであろう少女が飛び降り自殺をしたのだ、俺としては吃驚以外の何物でもない。というかどこかで見た覚えが・・・

「・・・ん」


少女は目を開け、俺を確認すると、目をぱちくりさせた



いやいや、俺の方がぱちくりしたいんだけど??


そんな心の声が聞こえるはずもなく、少女は数秒間を開けてから

「いき・・・・て、る??」

不自然な喋り方。

「ああ、運よく・・・俺にとっては悪くだが、俺が下にいたからな」

少女はゆっくりと首をかしげ

「何で、助けた、の??」

と質問してくる

「助けるつもりは微塵もなかったんだがな、偶然俺の上に着地したんだよ」

状況を少しずつ理解してきたらしい少女は、ごく自然な動作で手にした包丁を自分の首に突き付け・・・ってまてまて!!!

「何しようとしてんだ馬鹿!!」

慌てて止めたせいか、少女の包丁は俺の左腕を浅く切った。一瞬置いて真っ赤な血が滴る

「あ・・・」

少女はそれを見て動揺したのか、包丁を置くと、俺の傷跡を舐めはじめた(・・・・・・)

「いやいや何してんだ!?」

「血・・・止めないとだめ、だから」

「だからって舐める奴があるか!!」

猫かお前は、本気で焦ったぞ


「そうだ、名前聞いてなかったな」

よく名前を知らずにここまで会話が成立したものだ、我ながらアホらしい

「相手に名前を聞くときは、先に自分が名乗るんだ、よ??」

どうやら古き良き時代の方のようだ。やかましいわ

「・・・俺は長谷部十架。二年F組所属だ」

俺が簡単な自己紹介を終えると、少女は

「・・・・それだ、け??」

他に何があるんだ。自己紹介に

「好きなもの、とか」

小学生か。

「・・・・・・好きなものは和菓子だ。俺のはこれくらいでいいだろ。お前は??」

「・・・城ヶ崎、奈々。同じく二年F組。厳密に言うとあなたのとなりの、席」

・・・違和感の正体はそれか。どうやら俺は自分の隣の席の奴を覚えてなかったらしい。

「やっぱり、知らなかっ、た??」

「申し訳ないが人の名前を覚えるのは得意じゃ無くてな。だが・・・奈々か、覚えたぜ」

「人の名前覚えるの、苦手って、言った」

「自分とかかわりを持たない人のは、ってことだ。城ヶ崎は今かかわりをもったからな、覚えた」

城ヶ崎はいまいちわかっていないようで、非常にかわいらしく首をかしげる

「まぁ細かいことは考えるな。とにかく俺とお前はもう知り合いだ。OK??」

「おっけい」

それにしてもこいつ、どうにも心を開いてくれていないご様子。というのも語尾が不自然に止まるのも、おそらく人と話すことになれていない弊害だろう。死にたがってるのもそれなりに考えるべきではあるが今は注意が俺に向いている。だったら今のうちに死ぬことから注意を出来る限り逸らしておきたいな

「そう言えば、何で死のうとしたんだ??」

おぉーい。さっきの俺の言葉どこ行ったこの野郎

全力でやらかした俺の問いに、城ヶ崎は

「私は、この世界に必要無い子だから・・・」

悲痛な表情を浮かべるでもなく、まるであたりまえのことのようにそう言ってのけた

「・・・それは、誰かに言われたのか??」

「違う。皆がそう言う表情をしてる、の。お前は必要ないって、邪魔だって。生まれたときから今まで、親にも、クラスメイトにも、知らない人も、そんな顔を、する」

あぁ・・・これはあれだ、いわゆる『被害妄想』ってやつだ。我ながらとんでもないもんに当たっちまったなぁ・・・

「じゃあ俺はどう見える??今お前の目の前にいて、じっとお前の事を見つめている俺は、お前を邪魔だなんて目で見ているか??」

俺がそう言うと城ヶ崎は少しの間考えてから

「今のところはそうは思ってない、けど」

「そう、むしろ俺はお前と知り合えてよかったとさえ思っている。偽らざる、俺の本音だ。たとえ俺以外の全員がお前を邪魔だと思ったとしても、俺だけはそうは思わない。お前は俺にとって、もう必要な人なんだよ」

そう、嘘は言っていない。

「・・・・・・」

城ヶ崎は俺の言葉を聞くと顔を伏せてしまう。体が小刻みに震えているところから見るに、笑いをこらえているように見える

「あ~・・・っと、そのだな、今のは・・・えっと」

しどろもどろになってしまう俺、我ながら恥ずかしい事を言っちまったな・・・

「違う・・・違うよ、十架」

城ヶ崎は今俺のことを十架と呼んだ。そして顔を上げ、笑っているのではなく泣いているのだと俺が気づくとほぼ同時に

「嬉しいんだ、よ・・・そんなこと言ってくれた人、初めてだった、から・・・・」

目にいっぱいの涙を浮かべて、ひまわりのような笑顔を浮かべるのだった


























「十架、その横にひっついてるのは何だ??お前、人形遊びの趣味でもあったのか??」

外でのやり取りを終えて教室。隣の席だった城ヶ崎は机をくっつけ、俺の腕にひっついている。今のは、それを見た俺の親友の一言だ

「俺に人形遊びの趣味はねぇよ。良く見ろ、城ヶ崎だ。クラスメイトだろうが、覚えておけよ蒼太」

「ほぉ・・・機械人形(マシン・ドール)の城ヶ崎さんか・・・十架、どうやって落とした」

現実離れした青い短髪をきらめかせながら、俺の十年来の親友こと、飯島蒼太(いいじまそうた)は肘で俺をつついてくる

「やめい、それに落としてねえよ、いつも通りだ」

「なるほど、つまりいつも通りフラグとか建てたわけですか」

こいつの説明はたった一言。「馬鹿」に尽きる

「フラグって何だよ、ゲームじゃあるまいし」

「お前が今まで建てたフラグの数は256本、そのうちアタックしてきたのは52人、嵐気流(エア・ポケット)に阻まれたのが204人。一番恐ろしい事件は・・・・」

「あぁー、もういい。良く理解したから」

そう、こいつは馬鹿なのだが、人並み外れた情報収集力を持っており、それを全て記憶しているという化け物じみた才能がある。蒼太が時折呼んだ『機械人形(マシン・ドール)』『嵐気流(エア・ポケット)』というのも、こいつがその人たちの特徴を分かりやすく二つ名にしたものだ

ちなみに俺は『灰刃の太刀(グレイ・ブレード)』、蒼太は『蒼い記憶(マリン・ブレイン)』らしい。如何せん中二っぽいが、これがアイツなのだ

「知ってると思うけど一応自己紹介を、俺は飯島蒼太。よろしくな!!」

あ、城ヶ崎が止まった。

(アイツはどうだ??少なくとも何も考えちゃいないと思うが)

小声で聞いてみる

(うん。この人は何も考えていない、よ)

やっぱりそうだった。こいつは情報収集以外は全く駄目な馬鹿なのだ

「よろし、く・・・」

ぎこちないながらもあいさつを交わす。蒼太はなぜか人を笑顔にする力があるんだよなぁ・・・太陽みたいなやつなのだ

「十架、その子は誰??」

不意に、俺たちの席の後ろから、絶対零度もかくやという温度で放たれた声が飛んでくる。その声に俺は聞き覚えがあり、また瞬時にとてつもない怒りがあふれてくる

「・・・・お前に関係あるのかよ、嵐崎」

「あら、昔は雨香って呼んでくれたのに」

「十架、誰??」

隣でひっついてる城ヶ崎が心配そうに俺を見る。落ち着け、こいつにはあまり不安定なところを見せたくない

「・・・ああ、このクラスの委員長だ、名前は嵐崎雨香」

感情を押し殺した声で小さく告げる。冷静になれ、こいつは俺にとってどうでもいい奴のはずだろ!!

(・・・――――僕ね、・・・の事が・・・)

とたん、いつもの幻聴が俺を襲う。小さい頃の俺と、向うにいるのは・・・だめだ、分からない

「十、架??」

「・・・平気だ、悪いが外の空気吸ってくるわ」

一刻も早く教室から逃げ出したいのか、自然に早足になる。そしてドアを開けて外に出ようとしたときだった


「・・・逃げるの??」

嵐崎だ。この挑発してるとしか思えない声・・・。しかし、不安定な俺はその挑発に乗ってしまう

「っ・・・!!いい加減にしろよ・・・いつまでも俺が耐えきれる人間じゃねぇって事、知ってんだろ」

「ええ、知ってるわ。ついでにあなたが大切にしているがらくたも・・・」

瞬間、頭が真っ白になり、俺は嵐崎の胸倉をつかみ、窓に撃ちつけた

「だれの宝物が・・・がらくただと??」

突然の出来事にざわめくクラスメイト達。しかし俺はともかく嵐崎はその態度からクラスメイト全員に嫌われているのでだれも止めようとはしない。

「あら・・・女の子に手を出すつもり??」

「悪いが今は男女平等だ、それに殴る気はない。というか殴る価値もねぇ」

そう言って、手を離す。嵐崎は少し苦しそうに息をつき、それから

「そうよね、あなたはいつもそうだった。どんなに怒っていても、相手を傷つけることだけは絶対にしない。根っからの盾だものね。でもあなたは・・・・」

「それ以上余計な口を叩くな。」

分かってんだよ、そんなことは・・・!!。

「・・・十架、外、いこ??」

城ヶ崎が静かに手を取る。とたんに少しずつ怒りが収まっていく。

「・・・ああ、そうだな。」

ぎこちないながらも笑みを作り、そのまま城ヶ崎と一緒に屋上へ向かう。すると廊下を歩いている途中

「あの委員長と・・・知り合い??」

城ヶ崎は心配そうに俺の顔を見上げる。やっぱりこいつは可愛いな。断言できるぜ

「・・・ああ、小さいころからずっと一緒だった。いわゆる幼馴染だ」

嵐崎の異常性はつい最近生まれた。高一の秋ごろ、俺が初めて告白された日を境に、アイツは変わった。

俺のことを【自分の所有物】のように見始め、一時期はかなりの束縛を受けた。具体的には女子と喋るな、女子のアドレスを携帯に登録するな、最終的に女子と関わることさえアイツに禁じられた。

俺もだんだんと違和感を覚え始め、ついにある時、嵐崎に尋ねたのだ。「何故、お前が俺の事を束縛するのか」と。

アイツは言った。「私の所有物だもの、私の自由でしょう??」と

今まで一緒にいた幼馴染の本質。その片鱗を見た俺は、その日以降、嵐崎を異常なまでに拒絶した。今思えば当然かもしれない。付き合ってすらいないのに所有物と言われればだれだって腹が立つ。それを本人がいないところで言うならまだどうにでもなる。しかし俺は目の前で宣言された。そこが俺にとって最大で、且つ最悪なケースだった

それから不思議なことが起こった。

クラスの女子が、全員俺のことをシカトするようになったのだ。後から蒼太に聞いた限りでは、それも嵐崎が裏で手を引いていたらしい。それからもいろんなことが起きたが、最終的にクラスメイト(おもに女子)の怒りが爆発。いじめこそないものの嵐崎の支持率はゼロ。なぜ委員長をやっているのかが不思議なくらいだ・・・・・・というわけで、俺はこいつが嫌いなんだ


「・・・うか、十架、ついた、よ?」

「・・・ん、もう着いたんか」

悪い奴じゃないのは知ってる。知ってるんだが・・・やっぱりあいつを許せない。許すことが、出来ない

「・・・・・・雨降ってきた、ね」

横で奈々が悲しそうに呟く。見ると確かに降っている。さっきまであんなに晴れてたのに・・・





仕方ないので階段で時間を潰すことにした。まだ教室に戻れない。戻ってはいけない気がした。


「・・・・ひまだ、ね」

「やること無いからな、てか俺としてはお前が暇って言ったことに驚きなんだが・・・」


とはいえ、さすがに暇なんだよな・・・なんか無いものか・・・とポケットを探ってみる。すると

「あ、あやとりあるぞ、やるか?」

・・・・なぜあやとりが入っていたのだろう…まぁいいか

「や、る」

「よしきた、やるか」

言っておくが、俺は強いぜ?













――――五分後



「な・・・なんだと」

ごめんなさい、強すぎます

なにこの強さ、チートか!?

どんなに難しくしてもすぐに返されてしまう。それどころかもうわけわかんない!!

「お前、どんだけ強いんだよ・・・」

「得意、だから」

「得意とかそういう領域の話じゃねぇぞ・・・」

一言で表すなら才能としか言いようがないぞ、勝てる気がしねぇ

「十架も、強かった、よ??」

「同情なのか?それは同情なのか??」

ほっぺを横に引っ張る。うわ、やわらかっ!!

「ふぉうふぁ、ひゃめふぇ(十架、やめて)・・・・」

「どんだけ柔らかいんだほっぺ、プニプニじゃねぇか」

プニプニ、ビョーン、くにくに

「ふぉうふぁ・・・」

「やべ、やり過ぎたか。すまん」

離す。頬をふくらました奈々はそっぽを向いてしまう。だがしかし、かわいいのぉ


「ん、そろそろ戻らないと、授業始まるぞ」

「もう、そんな時間??」

「ああ、午後の授業まで五分ないぞ」

「次の授業、何??」

「国語。つまりあの鬼の授業だ」

俺たちの学校には、三人の鬼がいる。一人目は学年主任の宮橋。二人目は現社の芳賀。最後が国語の星野だ。どれも曲者でさらにキレやすいという最悪のケースである

「それは、大変」

「行くか、遅れたら洒落にならねぇ」

「うん」


そして俺たちは、心持ち急ぎ目に教室へと戻っていった

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