ずっと諦めていた仕事
わたしはせっかくなのだから話すことを活かした仕事に就こうと思った。それはわたしから一番遠く、ずっと諦めていた仕事だった。でも今は晴れてどもらずに話せるようになったのだから挑戦してみたかった。それにわたしは声がきれいなのだから。木を切って影だけが残ったように、わたしは五十嵐くんがいったその言葉をまだこころに大切にしまっていた。
「話すのが仕事っていったら……アナウンサーとか?」と永遠がいう。
「声優とか?」と橋子がいう。
「うん。でもなんだかどっちもわたしには華やか過ぎるような気がしてる。朗読士みたいな仕事があればいいのに」
「それってどんな仕事?」
「お年寄りが薬局で薬をもらって来たんだけど、その説明書きが細かくて見えないの。その時にわたしたちが派遣される。代わりに読んであげる。『薬は朝昼夕、食後にお飲みください』って。単身赴任中の親が子供の誕生日を祝う時にプレゼントと一緒にわたしたちが派遣されるの。『おめでとう! 大好きだよ』って言ってあげるの」
「いい仕事だね」
「『バイト辞めます!』とかも頼める?」
「仕事だから」とわたしは神妙な顔をする。
「声優よりはアナウンサーのほうが現実的だよね? アナウンサーはどこの大学に行っていたのかな」
「出身大学ランキングがあるみたいだよ」と永遠がスマホを見せる。私の知りたい情報がそこに全てあった。ランキングの上から順に書いて欄を埋める。




