バレンタインのチョコが嫌いな人間はいない
二週間前から挑戦という名の戦いは始まっている。何を作ろう。レシピサイトをわたしたちは見ている。
「トリュフなんていいんじゃない、作りやすくて」と先生の永遠がいう。
「あ、甘いの、好きかな」
「たとえチョコが嫌いでもバレンタインのチョコが嫌いな人間はいない!……きっと」と橋子がいう。
「きっと」
「絶対!……きっと」
「ど、どっちなの」わかんないなあと橋子はいう。
「甘いの苦手だったら甘さ控えめにしたチョコの焼き菓子がいいよね」
「わ、わたし、焼きたい気分」
「そう! じゃあそうしようよ」わたしたちはガトーショコラを作ることにする。ラッピングをネットで注文する。
2月13日、放課後のわたしたちは永遠の家に集まる。永遠の母親に挨拶をする。永遠の家の台所はリビングのように広い。大きなオーブン。冷蔵庫はふたつあり、ガスの口がみっつある。何もかもが私の家とは違っていた。エプロンを付けた永遠を前にさながら料理教室に来た気分になる。さっそくやろうかと永遠がいう。チョコレートをわたしたちは刻む。チョコレートをわたしは見つめる。ハンドミキサーで卵を混ぜる。卵をわたしは見つめる。
「いばらの真剣みがすごい」と永遠がいう。
「だ、だって。そ、そりゃそうだよ」
「わたしたちは家族にあげるだけだしね。醸し出せないよなあ」
混ぜ合わせた生地をオーブンで焼く。オーブンの前でわたしは中の様子をうかがう。上手く焼きあがるだろうか。機体と不安であっという間に時間が過ぎる。
粗熱をとっている間、わたしたちは永遠の母と4人で永遠の小さいころのアルバムを見ていた。昔はやんちゃだったけどだんだん内向的になってね。でも最近また元気になってきた感じと母はいう。よかったとわたしは思う。
冷めたのでわたしたちは食べてみる。わたしの焼いたガトーショコラは永遠にも食べてもらう。
「うん、上出来!」と彼女はいう。
「よかった」カットして丁寧にラッピングする。いっぱい食べてほしいから大きくカットした。
「食べてよ ただ君にだけにおくる甘さを控えた我が恋に似たチョコ」とわたしは詠う。歌と名前をカードに清書してケーキと一緒に箱に入れる。
「で、できた!」ここにはわたしの想いがたくさん詰まっている。達成感があった。
「絶対喜ぶよ五十嵐くん」と橋子がいう。
「絶対?」
「今度は絶対!」




