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てんぷら

タクシーに戻るとごんちゃんがフランクフルトを食べている。口の端にケチャップが付いている。それを見てわたしはこの人で良かったなと思う。


「ケチャップ、付いてるよ」わたしはティッシュをごんちゃんに渡す。お、ありがと。


「もういいのかい?」


「うん」


「お昼までまだあるね」と永遠がいう。


「うん、予定よりだいぶ進んでる。でももうお腹空いてきたけど」


「あ、朝ごはん、控えめにしたからね」


「あんたたち、てんぷら食べたかい?」


「てんぷら?食べてないけど。何かあるの??」


「沖縄の庶民の味さ。行ってみるかい?」


「へー、行ってみたい!」と永遠がいう。じゃあ行こうか。そうだね。


車でしばらく行って、少し歩く。アーケードの付いた商店街にごんちゃんは入っていく。屋根を透過した陽の光は、ほんのりと黄色味づきながら、店を、人々を柔らかく照らしている。隅々まで光が満ちているような。それぞれの商店は店の前にたくさんの商品を並べ、積み上げている。狸小路とはまた違った感じだ。祭りの出店より、こっちのほうが物珍しい。ごんちゃんは道の一角にある小さな露店へと向かっていく。店のお婆ちゃんに手で挨拶する。こんにちはとわたしたちはいう。


「あら、かわいい子連れて、あんた楽しそうな仕事してるね」


「そうかい?」ふたりは店から離れてわたしたちにはわからない言葉で話し始める。親戚なんだろうか。わたしたちは商品を眺める。イカ、もずく、うみぶどう、ポーク、色々な具を揚げたものがたくさん並んでいる。安い。


「フーチバーってなんだろうね」


「うん、聞いたことない。草っぽいね」


お客さんが来る。お婆ちゃんお客さん来たよとわたしたちはいう。


「あんたたち、売っといてくれる」と、お婆ちゃんはそういうと、ごんちゃんとの会話を熱を入れてまた続ける。え、とわたしたちは焦る。注文を聞きてんぷらを袋に入れお金を貰う。なんとか出来た。またお客が来る。わたしたちは売る。


「お、お婆ちゃん、戻ってくる気、な、ないみたい」


「やばいよ。任されてしまったよ」


初対面のわたしたちに任せていいのだろうか。わたしたちは店の物の場所を覚える。お札と小銭が籠の中に剥き出しで入っている。分業しようとわたしたちは相談する。橋子が呼び込みをして、わたしがてんぷらを袋に入れ、永遠が会計をすることにした。味がいいからか、お客さんが途切れずにやってくる。


「あ、アーサーって、どれですか?」


「これさ」とお客さんが指をさす。そうやってわたしはてんぷらの名前を覚える。



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